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時めく
「時めく〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
時めくの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
ひき起こす事のできる力を、葉子は田川夫人のほかに想像し得なかった。田川夫人が世に
時めく良人《おっと》を持って、人の目に立つ交際をして、女盛りといい条、もういくら....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
いない、と籠勝な道子は面白いものを見もし聞もしするような、物珍らしい、楽しみな、
時めくような心持もして、早や大巌山が幌に近い、西草深のはずれの町、前途は直ぐに阿....
「妖術」より 著者:泉鏡花
競うと、雨も霞んで、ヒヤヒヤと頬に触る。一雫も酔覚の水らしく、ぞくぞくと快く胸が
時めく…… が、見透しのどこへも、女の姿は近づかぬ。 「馬鹿な、それっきりか。....
「恐怖の口笛」より 著者:海野十三
ろしい陥穽なんです。ああ、あたし……」 と、よよと泣き崩れる声は、意外にも今を
時めく、龍宮劇場のプリ・マドンナ、赤星ジュリアに違いなかった。 それで解った。....
「大使館の始末機関」より 著者:海野十三
。 「人払いだ」 醤は、目が覚めるや、大声を発した。 居候なりとはいえ、今を
時めくABCDS株式国家のC支店長の号令である。それに愕いて医師は診察鞄をそこに....
「古狢」より 著者:泉鏡花
士になり、且つ指環を、竈の火に彩られて顕われた。 「おお、これは。」 名古屋に
時めく大資産家の婿君で、某学校の教授と、人の知る……すなわち、以前、この蓮池邸の....
「小春の狐」より 著者:泉鏡花
曳いて坂を上ったのである。衣の香に包まれて、藤紫の雲の裡に、何も見えぬ。冷いが、
時めくばかり、優しさが頬に触れる袖の上に、月影のような青地の帯の輝くのを見つつ、....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
片に、曇のある趣に似たが、風情は勝る、花の香はその隈から、幽に、行違う人を誘うて
時めく。薫を籠めて、藤、菖蒲、色の調う一枚|小袖、長襦袢。そのいずれも彩糸は使わ....
「革鞄の怪」より 著者:泉鏡花
くにして席へ戻る、と忙わしく革鞄の口に手を掛けた。 私はドキリとして、おかしく
時めくように胸が躍った。九段第一、否、皇国一の見世物小屋へ入った、その過般の時の....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
くさい、汗蒸れたのが跳廻る。 「ソレまた……」 気にすると、直ぐに、得ならず、
時めく、黒髪の薫が颯と来た。 「また夢か。」 いつまで続く、ともうげんなりして....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
い――洗ったばかりだからとは言われたが、どこかヒヤヒヤと頸元から身に染む白粉の、
時めく匂で。 またぼうとなって、居心が据らず、四畳半を燈火の前後、障子に凭懸る....
「獄中消息」より 著者:大杉栄
コスモスが盛んだろうということだが、ここにもコスモスは年の終りの花王として花壇に
時めく。お互いにこのコスモスの咲く頃を鶴首して待とう。 去年の春は春風吹き荒ん....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
井桜を知っていた。 夢ではない。……得忘るまじく可懐しい。ただ思うにさえ、胸の
時めく里である。 この年の春の末であった。―― 雀を見ても、燕を見ても、手を....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
の名手と謂えば風采のほども推量られる、次の室の葭戸の彼方に薔薇の薫ほのかにして、
時めく気勢はそれであろう。 五ツ紋の青年は、先刻門内から左に見えた、縁側づきの....
「鷺娘」より 著者:大倉燁子
符が沢山届けられた。 気の利いたそのプログラムを眺めると、まゆみは我知らず心の
時めくのを覚えた。自分も止めなかったら、やはりこうして晴れの舞台も踏めるものを―....