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曇らす
「曇らす〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
曇らすの前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「勲章を貰う話」より 著者:菊池寛
に、服の袖がだらりとしているのが淋しかった。が、それは、彼ののうのうとした心持を
曇らすには足りなかった。彼は、病院の廊下を、大股でゆっくりと歩き始めた。ガラス戸....
「虞美人草」より 著者:夏目漱石
引き入れる戦争か、肝胆の外に追っ払う戦争か。哲学者は二十世紀の会話を評して肝胆相
曇らす戦争と云った。 ところへ小野さんが来る。小野さんは過去に追い懸《か》けら....
「彼岸過迄」より 著者:夏目漱石
んだが、両親《ふたおや》に対する僕の記憶を、生長の後《のち》に至って、遠くの方で
曇らすものは、二人のこの時の言葉であるという感じがその後《のち》しだいしだいに強....
「こころ」より 著者:夏目漱石
ことに目立つように思えた私に対するお嬢さんの挙止動作《きょしどうさ》も、Kの心を
曇らす不審の種とならないとは断言できません。私は何とかして、私とこの家族との間に....
「出家とその弟子」より 著者:倉田百三
てください。静かに、心を落ち付けて。あなたは興奮していられる。恋は知恵者の目をも
曇らすものだでな。私はお寺のため、法のためを思わずにはいられませぬ。また何百とい....
「孟買挿話」より 著者:吉行エイスケ
を待っている。私は宴のなかばを抜けて夜の孟買の街を英国の煙管から吐き出される煙で
曇らすのだが、印度人の象使いが象の背に古代神の敷物を敷いて外人の子供を乗せて円の....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
同時に、清吉の行方が不明になった。 その事が、時あって駒井甚三郎の心を、いたく
曇らすのだが、今宵の淋しさはそれとはまた違う。 人間のたまらない淋しい心は、そ....
「塵埃、空、花」より 著者:宮本百合子
、今頃から桜が散るまで私は毎年余り愉快に暮すことが出来ない。 春の東京を一帯に
曇らす砂塵が堪らないのが第一の原因だ。花曇りなどと云う美的感情に発足したあれは胡....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
これら両人は、暗鬼を生むところの疑心を持たぬ風流人であった。その風流人の風流心を
曇らすところの現象が存在して蹌《うご》いたことはたしかに事実で、その証拠には、彼....
「学生と生活」より 著者:倉田百三
なくなる。そしてさらに不幸なことには、このことは人生一般の事象を見る目の純真性を
曇らすのだ。快楽の独立性は必ず物的福利を、そして世間的権力を連想せしめずにはおか....
「田舎医師の子」より 著者:相馬泰三
れほど庸介は窓の近くに立っていた。自分の吐き出す熱い息が、冷たいガラスの面を白く
曇らすのに気がついて、初めてそっと身を引いた。 「……あれが母親だろうか。あんな....
「江戸芸術論」より 著者:永井荷風
といへり)。広重は四条《しじょう》派の山水に見るが如き濃淡を以て巧みに樹木風景を
曇らす霞を描きたれど、晴天の青空に浮動する雲につきては一度《ひとたび》も北寿の如....
「食道楽」より 著者:村井弦斎
ープと珈琲《こーひー》とゼリーに混ぜてそのアクを除き得るや、 鶏卵は何故に銀器を
曇らすか、 とこういう質問だ。魚料理の処には、 白き肉の魚と紅《あか》き肉の....
「それから」より 著者:夏目漱石
あるものは自分であると考え出したら悲しくなった。彼は今日もこの美くしさの一部分を
曇らす為に三千代を呼んだに違なかった。 代助は幾度か己れを語る事を躊躇《ちゅう....