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朧げ
「朧げ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
朧げの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「邪宗門」より 著者:芥川竜之介
の下の涼しさが、何となく肌身にしみて、そう云う御姫様の悲しい御姿を、自分もいつか
朧げに見た事があるような、不思議な気が致したそうでございます。
その内に橋の上....
「影」より 著者:芥川竜之介
、失心してしまったかも知れなかった。が、この時戸から洩れる蜘蛛《くも》の糸ほどの
朧げな光が、天啓のように彼の眼を捉《とら》えた。陳は咄嗟《とっさ》に床《ゆか》へ....
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
て見たら、ふだんは人間の眼に見えない物も、夕暗にまぎれる蝙蝠《こうもり》ほどは、
朧げにしろ、彷彿《ほうふつ》と見えそうな気がしたからです。
が、東京の町で不思....
「無名作家の日記」より 著者:菊池寛
また、京都に来たために、文壇に出る機会が、かえって早められるかも知れぬ見込みが、
朧げながらあった。それは中田博士が、京都の文科の教授であることであった。博士は、....
「恩を返す話」より 著者:菊池寛
年の春から、彼は朝ごとに、咳をした。その度にしばらくは止まなかった。彼は初めて、
朧げながら死を予想した。前途の短いのを知ってからは、是非|為《な》さなければなら....
「支倉事件」より 著者:甲賀三郎
工夫はないかなあ」 老練な根岸刑事もあぐね果てこんな事を考えながら腕を組んだ。
朧げながら支倉の旧悪を調べ上げた石子刑事は久々で署へ出勤した。刑事部屋には窓越し....
「雨」より 著者:織田作之助
軽部村彦という男が品行方正で、大変評判のいい血統の正しい男であるということだけが
朧げにわかった。 三日経つと当の軽部がやってきた。季節はずれの扇子などを持って....
「両面競牡丹」より 著者:酒井嘉七
なり、そこを透して、ほど遠からぬ港の船のいくつかが、段階子を降りて行く目の前に、
朧げながら浮んでくるのでございます。窓の向うには、なおも、魔物のような濃霧が、濛....
「夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
思量すれば、そういう経験のなかに、近代ロマンチック精神の育くまれつつあった実証が
朧げながら見られる。 鶴見はとにかく不毛な詩作の失望から救われた。言葉の修練を....
「夢殿殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
形に切り取られているので、振り仰ぐと上層の暗がりの中に、巨大な竜体のような梁が、
朧げに光って見えるのだった。さて法水は、散り敷かれている金泥の小片を、一々手に取....
「飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
も根好く待っていた。 「これは確に蒙古の字です。僕には全部は判りませんが、所々は
朧げに其意味が推察されます。」と、忠一は手帳を収いながら、「これに因て考えると、....
「五重塔」より 著者:幸田露伴
て異な色になりし上、幾たびか洗い濯がれたるためそれとしも見えず、襟の記印の字さえ
朧げとなりし絆纏を着て、補綴のあたりし古股引をはきたる男の、髪は塵埃に塗れて白け....
「雨」より 著者:織田作之助
ゞ軽部という男が天王寺第三小学校で大変評判の良い教師で、品行方正だという事だけが
朧げに分った。その軽部は、それから三日後、宗右衛門町の友恵堂の最中五十個を手土産....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
斜地に出る。ひどい笹だ。此時雲がうすれて西の方へ南を指して下るらしい尾根の一部が
朧げに現れた、針葉樹の立木が濡紙にぱたりぱたりと墨をにじましたような影をつくる。....
「黒部川を遡る 」より 著者:木暮理太郎
尾根の上に頭を擡げ、黒部別山の右に、舟窪の尾根を超えて、遥に大天井、常念あたりが
朧げな姿を雲間に垣間見せていた。 此処で助七の一行三人と別れることにした。今日....