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木魂
「木魂〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
木魂の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
て来ても、葉子はそれに対して毛の末ほども心を動かされはしなかった。それは遠い遠い
木魂《こだま》のようにうつろにかすかに響いては消えて行くばかりだった。過去の自分....
「地球盗難」より 著者:海野十三
ものとも知れぬ怪しげなる泣き声が聞えてくるのであった。それはそこの壁、ここの丘に
木魂して、ゾクゾクと襟元に迫った。――大隅学士は繁みの中からソロソロ匍いだした。....
「田原坂合戦」より 著者:菊池寛
することになり、参軍山県中将も本営を高瀬に進めた。十四日の午前六時、号砲三発山に
木魂すると共に、官軍の先鋒は二俣口望んで、喊声を挙げる。歩兵に左右を衛られた中央....
「申陽洞記」より 著者:田中貢太郎
れる方へおりて往った。林の下はうっすらと暮れていた。鳥や獣の啼く物凄い声が谷々に
木魂をかえした。山のうねりが来た。李生はそのうねりを登って往った。古廟の屋根が見....
「光と風と夢」より 著者:中島敦
疳高《かんだか》い笑声とが聞えた。ゾッと悪寒が背を走った。はじめの物音は、何かの
木魂《こだま》でもあろうか? 笑声は鳥の声? 此の辺の鳥は、妙に人間に似た叫をす....
「化け物の進化」より 著者:寺田寅彦
こえる事と、この二つの要素がちゃんとつかまれていたからである。思うにこの役者は「
木魂」のお化けをかなりに深く研究したに相違ないのである。 「伽婢子」巻の十二に「....
「不尽の高根」より 著者:小島烏水
、隆として折目を正した。思いがけなく、落葉松の森林から鐘が鳴った、小刻みな太鼓が
木魂のように、山から谷へと朝の空気を震撼した。神主の祝詞が「聞こし召せと、かしこ....
「不動像の行方」より 著者:田中貢太郎
立てて降って来た。雷は続けざまに鳴りはためいた。その雷の響が凄じく附近の山やまに
木魂を返した。電光もひっきりなしに物凄く燃えた。 雷雨は一時ばかりも続いてけろ....
「死者の書」より 著者:折口信夫
ある。乳母も、子古も、凡は無駄な伺いだ、と思っては居た。ところが、郎女の答えは、
木魂返しの様に、躊躇うことなしにあった。其上、此ほどはっきりとした答えはない、と....
「レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
、すべての永貸契約、賃貸契約、世襲財産、公有官有の契約、抵当書入契約……。」
「
木魂《こだま》よ、嘆けるニンフよ……。」とグランテールは口ずさんだ。
グランテ....
「近藤勇と科学」より 著者:直木三十五
、兵は、すぐ射撃した。近藤は、飛出す弾丸を見ようとしていたが、ばあーんと、音が、
木魂《こだま》しただけで弾丸の飛ぶ筋が見えなかった。 (慣れたら、見えるだろう)....
「南国太平記」より 著者:直木三十五
その瞬間だ――
「ええいっ」
それは、声でなく、凄じい音だった。谷へも、山へも
木魂《こだま》して響き渡った。青年は、その声と一緒に、身体も、刀も、叩きつけるよ....
「安吾の新日本地理」より 著者:坂口安吾
い・い・かアーい」 「まア・だ・だ・よーオ」 という隠れんぼの声だ。それを遠く
木魂にしてきくと、この笛の単調な繰り返しに、かなり似るようである。すぐ耳もとで笛....
「うつす」より 著者:中井正一
ロ…………ォと喚びかえさるることすらある。一つの声が無限の空間の中に喚びかえし、
木魂《こだま》し反響するその深い感興こそ、胸の中のあらゆる幾山河に響かうそのひび....
「嫁入り支度」より 著者:神西清
「まあ!」という歓声がほとばしり、眼がくるくると廻りだす。その「まあ」が、まるで
木魂のように、控室から広間へ、広間から客間へ、客間から台所へ……あげくのはては穴....