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「松飾り〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

松飾りの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
籠釣瓶」より 著者:岡本綺堂
もう主人の胸倉を掴んで引き摺って帰りたいようにもいらいらして来た。 背中合せの松飾りはまだ見えなかったが、家々の籬《まがき》のうちには炉を切って、新造や禿《か....
思い出す事など」より 著者:夏目漱石
三 正月を病院でした経験は生涯《しょうがい》にたった一遍《いっぺん》しかない。松飾りの影が眼先に散らつくほど暮が押しつまった頃、余は始めてこの珍らしい経験を目....
乱世」より 著者:菊池寛
一 戊辰正月、鳥羽伏見の戦で、幕軍が敗れたという知らせが、初めて桑名藩に達したのは、今日限りで松飾りが取れようという、七日の午後であった。 同心の宇多熊太郎という男が、戦場....
海野十三敗戦日記」より 著者:海野十三
がわれらの傍に出来た。こんなにはっきりと二つの世界が出現したのは始めての経験だ。松飾りも買わない正月(ヤミ屋をわざわざよろこばせてなにになるか)、かまぼこも街に....
うつり香」より 著者:近松秋江
して、火鉢や茶箪笥のような懐かしみのある所帯道具を置き並べた道具屋の夜店につづく松飾りや羽子板の店頭には通りきれぬばかりに人集りがしていた。 他人になった今で....
元日」より 著者:夏目漱石
云うと十二月二十三日である。家《うち》では餅《もち》もまだ搗《つ》かない。町内で松飾りを立てたものは一軒もない。机の前に坐《すわ》りながら何を書こうかと考えると....
旧聞日本橋」より 著者:長谷川時雨
一枝の花の愛《いと》しみかたも格別だった。紅梅が咲けば折って前髪に挿し、お正月の松飾りの、小さい松ぼっくりさえ、松の葉にさして根がけにした。山吹の真白なじくも押....
理想の女」より 著者:豊島与志雄
。自分自身が滑稽だった。滑稽を通り越して泣きたかった。「松飾《まつかざ》りーい、松飾り、」の所へ来て手を忘れた。つかえてしまった。私はぴんと三本の絃《いと》を引....
明治開化 安吾捕物」より 著者:坂口安吾
年が改って一月の十三日。松飾りも取払われて、街には正月気分が見られなくなったが、ここ市川の田舎道を着かざ....
一商人として 」より 著者:相馬愛蔵
く御悩の去らんことを祈りつつ、街々は迎春の用意に商店の軒先も注連繩を張り、吉例の松飾りを立てつつ安き心はなかったのです。ついに陛下は神去りまして世はまるで火の消....
人魚謎お岩殺し」より 著者:小栗虫太郎
た。閉め忘れた裏木戸が、風のためにバタンバタンと鳴りつづけ、大道を吹き荒ぶ風は、松飾りに浪のような音を立てさせている。ふと、その響きに、彼は夷岐戸島の海鳴りを聯....
明日は天気になれ」より 著者:坂口安吾
状の方が多い。したがって、度々転居ぐせのある私の現住所へ届くには日数がかかって、松飾りをとってから連日舞いこんでくるのである。 遠方のどこかで未知の人々が私の....
正月の思い出」より 著者:岡本綺堂
みえて、旗の色がみな新しく鮮やかであるのも、新年の町を明るく華やかに彩っていた。松飾りも例年よりは張り込んだのが多く、緑のアーチに「祝戦捷」などの文字も見えた。....
江戸芸術論」より 著者:永井荷風
したる海岸に連《つらな》り、その沖合《おきあい》遥《はるか》なる波の上には正月の松飾りしたる親船、巍然《ぎぜん》として晴れたる空の富士と共にその檣《ほばしら》を....
深川の唄」より 著者:永井荷風
わるいペンキ塗の広告がベタベタ貼《は》ってある。竹の葉の汚《きたな》らしく枯れた松飾りの間からは、家の軒《のき》ごとに各自勝手の幟《のぼり》や旗が出してあるのが....