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「枚手〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

枚手の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
明暗」より 著者:夏目漱石
焼麺麭《トースト》が食欠《くいかけ》のまま投げ出されてあった。しかもほかにまだ一枚手をつけないのが、綺麗《きれい》に皿の上に載っていた。玉子もまだ一つ残っていた....
少女地獄」より 著者:夢野久作
間はすまなかった。いつも間が悪くて君に会う機会がない。きょうは歌舞伎座の切符が二枚手に入ったから一緒に見に行かないか。午後一時の開場だから十時頃の電車で銀座あた....
空襲葬送曲」より 著者:海野十三
ワナワナと震えて来た。 参謀長は、満面朱を塗ったように怒張し、その爆発を、紙一枚手前で、堪えているようであった。 コツ、コツ。 扉にノックの響があった。 ....
ビジテリアン大祭」より 著者:宮沢賢治
ら鼠色《ねずみいろ》や茶いろのビラを撒《ま》いて行きました。その鼠いろのを私は一枚手にとりました。それには赤い字で斯《こ》う書いてありました。 「◎偏狭非学術....
踊る地平線」より 著者:谷譲次
だろう。手紙や葉書がたくさん挟んである。混雑に紛れて、僕は郵便棚へ近づいて二、三枚手に取ってみた。古いのばかりだ。手垢とごみで薄黒くよごれてる。が、これは一たい....
少年の死」より 著者:豊島与志雄
見える。 彼は黙っていわるるままに下駄をはいた。そしてその男の差出した白銅を一枚手に取った。それからそのまま歩き出した。 大勢の者が彼の後からぞろぞろついて....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
いうりっぱな口をきいてから数分たつと、彼は蒲団《ふとん》の上に散らかってる紙を一枚手探りに捜して、それになお多少の譜を書きつけようとした。そして自分の矛盾に気が....
レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
ってきたのである。そして室の閾《しきい》をまたがないうちに、祖父が自分の名刺を一枚手に持ってるのを見た。祖父は彼の姿を見るや、何かしらてきびしい市民的な冷笑的な....
大鵬のゆくえ」より 著者:国枝史郎
。チリヂリバラバラになってしまった。それをどうして手に入れられたものかお父上が一枚手に入れられた。それがこの喜撰法師だ。ところが隣家の専斎殿はそれを二枚も持って....
食道楽」より 著者:村井弦斎
い塩梅《あんばい》で出来加減が分りますが匂いがしてまた二、三分過ぎた時分半紙を一枚手に持っていて、外《そと》の空気の入らないようにそうっと少しばかり玉子焼鍋の蓋....
上海」より 著者:横光利一
も点けずに戸棚の中をがたがたと掻き廻していてから、また手探りのまま黙って浴衣を一枚手渡した。 「君、火を点けてくれないか。こう暗くちゃどうしようもないじゃないか....
鳴門秘帖」より 著者:吉川英治
」 「あいよ」お綱は札を指で弾いて「よくもこう縹緻の悪い手ばかり付く……」と、一枚手から抜きかけたが、ちょっと考える様子をして、何の気もなく上眼づかいに天井を見....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
た提燈を吊して、脛の長い女の子と立って笑っている肥った露西亜人の女の写ったのを一枚手に入れて、早速うちの子に通信を認めると、急いで郵便局の小窓の前に行って見たが....
ロザリオの鎖」より 著者:永井隆
空衣のポケットに五銭玉がひとつ入っていた。それが私の全財産だった。私は絵葉書を一枚手に入れることができたので、それに焼け出されたことを書いて、その五銭玉をそえ、....
沖縄帰郷始末記」より 著者:山之口貘
ある。 そこへ、本紙のY氏があらわれた。仕方がないので、机の上のあいさつ状を一枚手渡したのである。やがて、「随筆」を、とのことなので、一信の原稿も書かないうち....