柳の糸[語句情報] » 柳の糸

「柳の糸〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

柳の糸の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
喝采」より 著者:太宰治
危き夜には、薄き化粧、ズボンにプレス、頬には一筋、微笑の皺《しわ》、夕立ちはれて柳の糸しずかに垂れたる下の、折目正しき軽装のひと、これが、この世の不幸の者、今宵....
旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
常盤橋御門、ぬけると道は愈々暗い。 お濠を越えて吹き渡る夜風がふわり、ふわりと柳の糸をそよがせながら、なぜともなしに鬼気身に迫るようでした。 濠について街の....
田舎教師」より 著者:田山花袋
いろく色づき、野の朝の雨|斜なり。夜は学校にとまる。 八日。 雨はげしく井戸端の柳の糸乱る。今宵も学校にとまる。 九日。 早く帰る。秋雨やうやく晴れて、夕方の雲....
白峰山脈縦断記」より 著者:小島烏水
はらり、はらりと、落ち散るのであった。 その後、春になって、街道に青く角芽ぐむ柳の糸を見るたびに、大井川上流の深谷に秘められて、黙々と、皺だらけな、深刻な顔を....
自然描写における社会性について」より 著者:宮本百合子
の中にもあらわれ得る。それは、自分の生活とはきりはなして雨を眺め、春雨はやさしく柳の糸をぬらしています云々のいわゆる美文的作文である。 然し、この美文的作文が....
南地心中」より 著者:泉鏡花
、十六七が潰し島田。前髪をふっくり取って、両端へはらりと分けた、遠山の眉にかかる柳の糸の振分は、大阪に呼んで(いたずら)とか。緋縮緬のかけおろし。橘に実を抱かせ....
霧陰伊香保湯煙」より 著者:三遊亭円朝
神の森」これは先代茂木佐平治の句で、他に眞顏の碑が建って居ります「あらそはぬ風の柳の糸にこそ堪忍袋縫ふべかりけれ」という狂歌が彫ってあります。大門を出ると、角に....
番町皿屋敷」より 著者:岡本綺堂
ていた。お菊は庭下駄を穿いて井筒のそばに寄った。そそけた島田の鬢をなぶろうとする柳の糸を振袖の袂で払いながら、彼女はその底をみおろすと、水に映ったのは自分の陰っ....
空家」より 著者:宮崎湖処子
、路傍の一里塚《いちりづか》も後になりて、年|経《ふ》りし松が枝も此方を見送り、柳の糸は旅衣を牽《ひ》き、梅の花は裳に散り、鶯《うぐいす》の声も後より慕えり、若....
植物一日一題」より 著者:牧野富太郎
南岸に洲あり古柳蟠低して異風奇態あり夫木集に知家朝臣の歌に咲花に錦おりかく高野山柳の糸をたてぬきにしてといふ此歌にては※柳のことあらわれず扶桑名勝詩集に宕快法印....
荘子」より 著者:岡本かの子
配置されていて庭を通して互いの部屋は見透さぬようになっていた。窓々には灯がともり柳の糸が蕭条と冷雨のように垂れ注いでいた。 二人が侍女を対手に酒を呑み出して居....
式部小路」より 著者:泉鏡花
橋の中央に、漆の色の新しい、黒塗の艶やかな、吾妻下駄を軽く留めて、今は散った、青柳の糸をそのまま、すらりと撫肩に、葉に綿入れた一枚小袖、帯に背負揚の紅は繻珍を彩....
妾宅」より 著者:永井荷風
て鬱込《ふさぎこ》むところにある。昔からいい古した通り海棠《かいどう》の雨に悩み柳の糸の風にもまれる風情《ふぜい》は、単に日本の女性美を説明するのみではあるまい....
日和下駄」より 著者:永井荷風
《びょうぶ》七宝《しっぽう》の古陶器を見る如き色彩の眩惑を覚ゆる。けだし水の流に柳の糸のなびきゆらめくほど心地よきはない。東都|柳原《やなぎわら》の土手には神田....
中世の文学伝統」より 著者:風巻景次郎
き野の春駒は霞にのみやたな引かるらむ いかなれば氷はとくる春風にむすぼほるらむ青柳の糸 いわゆる俊成のざれ歌ざまのものであって、一歩をあやまると、単なる駄洒落に....