榾火[語句情報] » 榾火

「榾火〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

榾火の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
伝吉の敵打ち」より 著者:芥川竜之介
刃《しらは》の光りを見ると、咄嵯《とっさ》に法衣《ころも》の膝《ひざ》を起した。榾火《ほたび》に照らされた坊主の顔は骨と皮ばかりになった老人だった。しかし伝吉は....
神神の微笑」より 著者:芥川竜之介
寸《いっすん》とは自由に動かなかった。その内にだんだん内陣《ないじん》の中には、榾火《ほたび》の明《あか》りに似た赤光《しゃっこう》が、どこからとも知れず流れ出....
素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
食い入るように見据えたまま、必死にその誘惑を禦《ふせ》ごうとした。が、あの洞穴の榾火《ほたび》の思い出は、まるで眼に見えない網のように、じりじり彼の心を捉《とら....
緑の芽」より 著者:佐左木俊郎
まだ戻らなかった。祖父は炉端《ろばた》で、向こう脛《ずね》を真赤《まっか》にして榾火《ほだび》をつつきながら、何かしきりに、夜|更《ふ》かし勝ちな菊枝のことをぶ....
手品」より 著者:佐左木俊郎
「チャセゴの餓鬼《がき》どもが来んべから、早くはあ寝るべかな。」 妻のおきんは榾火《ほだび》を突つきながら言った。 「馬鹿なっ! そんなことは出来るもんでねえ....
白峰山脈縦断記」より 著者:小島烏水
だ穴の中に、頭を駢べて、横になったのが、私たち四人――人夫を合せて八人――偃松の榾火に寒さを凌いで寝た。 霧が夜徹し深かった、焚火の光を怪しんで、夜中に兎が窺....
岩魚」より 著者:佐藤垢石
ね」 賢彌は、馬鹿々々しいといった顔で笑ったのである。 家族三人で囲んだ爐の榾火に、どこからともなく忍んできた隙間風が、ちょろちょろと吹いて過ぎた。 六....
魔味洗心」より 著者:佐藤垢石
りと肥って、触れれば体温でもありそうだ。舌ざわり細やかな脂肪に富んで、串にさして榾火に当てれば、脂肪が灰に漏れ落ちる。 これは、吾妻川上流の水質が、山女魚の餌....
老狸伝」より 著者:佐藤垢石
のである。二日目は、暁暗の頃から人夫らは工事場へやってきた。 そして、しばらく榾火を焚いて一服すっているうちに、東が明るくなってきたところが、人夫らが掘り掛け....
酒徒漂泊」より 著者:佐藤垢石
うところで、村役場の看板を発見した。門から覗いてみれば、小使室らしい爐のなかで、榾火があかあかと照っている。しめた、と思った。 そこでまた、銀平の決心を促すこ....
濁酒を恋う」より 著者:佐藤垢石
いたか知らないが、私のとなりの家に、飲兵衛のお爺さんがいて、毎日|炉傍で濁酒を、榾火で温めては飲んでいたのをいまも記憶している。納戸部屋の隅に伊丹樽を隠しておい....
冬の鰍」より 著者:佐藤垢石
て、一層種類が増したことであろう。 山小屋の囲炉裏に、串に刺した鰍を立てならべ榾火で気長に烙って、山椒醤油で食べるのが最もおいしい。焼きからしを摺鉢ですり、粉....
千ヶ寺詣」より 著者:北村四海
の夜も六七人の子供が皆大きな炉の周囲に黙って座りながら、鉄鍋の下の赤く燃えている榾火を弄りながら談している老爺の真黒な顔を見ながら、片唾を呑んで聴いているのであ....
白峰の麓」より 著者:大下藤次郎
段を考えた。 窓近くに鹿が鳴いたら嬉しかろう。係蹄で捕れた兎の肉を、串にさして榾火で焼きながら、物語をしたら楽しかろうと思った。囲炉裡の火は快よく燃える。銘々....
案内人風景」より 著者:黒部溯郎
物語ってくれる。誰でも上高地を訪ねた人が、もし機会があったなら、彼を訪ねて炉辺に榾火を焚きながらこの物語を聞いて御覧なさい。相応しい山物語りにホロリとする所があ....