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「樹間〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

樹間の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
(明治39・8) 日光の秋八月、中禅寺をさして旧道をたどる。 紅い鳥が、青い樹間から不意に飛び出した。形は山鳩に似て、翼も口嘴もみな深紅である。案内者に問え....
人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
おそろしい棘草、その密生の間を縫う大毒蜘蛛――。しかし今日は、いよいよ草は巨きく樹間はせまり、奥熱地の相が一歩ごとに濃くなってゆくのだ。そして、この三日の行程が....
連環記」より 著者:幸田露伴
から入らなかったのであろう。別に抗弁するのでも無ければ、駁撃するというでも無く、樹間の蝉声、聴き来って意に入るもの無し、という調子にあしらって終った。右衛門も腕....
琵琶伝」より 著者:泉鏡花
り。叔母は此方を見も返らで、琵琶の行方を瞻りつつ、椽側に立ちたるが、あわれ消残る樹間の雪か、緑翠暗きあたり白き鸚鵡の見え隠れに、蜩一声鳴きける時、手をもって涙を....
霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
ったこともございました。又道中どこへ参りましても例の甲高い霊鳥の鳴声が前後左右の樹間から雨の降るように聴えました。お爺さんはこの鳥の声がよほどお好きと見えて、『....
街はふるさと」より 著者:坂口安吾
しく、たのしいよ。風に乗って、たのしいことが運ばれてきたようなものさ」 炎天の樹間をくぐって、いくらか涼風が通ってくるが、杯をあげているから、汗の量をへらすだ....
貞操問答」より 著者:菊池寛
いた。 石燈籠が、ずらりと両側に並んで、池の端から、下谷の花柳界の賑いの灯が、樹間に美しく眺められた。 「ただ、お友達の印だけの、かるい接吻がほしかったのに…....
銅銭会事変」より 著者:国枝史郎
た。 「往昔福建省福州府、浦田県九連山山中に、少林寺と称する大寺あり。堂塔|伽藍樹間に聳え、人をして崇敬せしむるものあり。達尊爺々の創建せるも技一千数百年の星霜....
血の盃」より 著者:小酒井不木
「丑の刻参り」の真似をするわが子の心の怖ろしさに戦慄を禁ずることが出来なかった。樹間をもる月影に照されたあさ子の、波打つ肉体の顫律を感じたとき、丹七は二十年の昔....
父の墓」より 著者:岡本綺堂
げに唖々と啼過れば、あなたの兵営に喇叭の声遠く聞ゆ。 おぼつかなくも籬に沿い、樹間をくぐりて辿りゆけばここにも墓標新らしき塚の前に、一群の男女が花をささげて回....
贋物」より 著者:葛西善蔵
一度もまだはいって行ってみたことのない村の、黝んだ茅屋根は、若葉の出た果樹や杉の樹間に隠見している。前の杉山では杜鵑や鶯が啼き交わしている。 ふと下の往来を、....
中世の文学伝統」より 著者:風巻景次郎
る幸を思いつづけている。この北方の都は幸に捨てねばならぬ伝統の桎梏を持たず、緑の樹間に白雲を望む清澄の空気は、壊滅の後の文化再建を考えるにこの上もなく応わしいよ....
ラスキンの言葉」より 著者:小川未明
る。 こう思った時にひとしおのさびしさが感じられた。そして、折しも、沈みつゝ、樹間をいろどれる夕日を思い深くながめたのであった。 爾来幾年、雑司ヶ谷の墓地も....
父の出郷」より 著者:葛西善蔵
「何時だってかまわない……」 私はこう言って羽織と足袋を脱ぎ、袴をつけて、杉の樹間の暗い高い石段を下り、そこから隣り合っている老師のお寺の石段を、慄える膝頭を....
茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
中に猪の鼻と飛び上り、又一声鳴いては飛び上りつつ翔ってゆく。偶々自分の休んで居る樹間に翔って来ることなどもある。そんなとき、じっと静かにして見ていると、比較的細....