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橡
「橡〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
橡の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「鼻」より 著者:芥川竜之介
。
翌朝、内供がいつものように早く眼をさまして見ると、寺内の銀杏《いちょう》や
橡《とち》が一晩の中に葉を落したので、庭は黄金《きん》を敷いたように明るい。塔の....
「河童」より 著者:芥川竜之介
しました。のみならず足をすべらして転《ころ》がったこともたびたびです。が、大きい
橡《とち》の木が一本、太ぶとと枝を張った下へ来ると、幸いにも放牧の牛が一匹、河童....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
ってきて、たださえ仄暗い灯の行手を遮るのだった。やがて、凄愴な自然力に戦いている
橡の樹林が現われ、その間に、二本の棺駐門の柱が見えた。そこまで来ると、頭上の格の....
「賤ヶ岳合戦」より 著者:菊池寛
火した。本陣は内中尾山に置いて、勝家|此処に指揮を執り、別所山には前田利家父子、
橡谷山には、徳山、金森、林谷山には不破、中谷山には原、而して佐久間兄弟は行市山に....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
に二人は石の大鳥居から、十六階、二十階より成る二町ほどの石段を登った。左右に杉や
橡の林のもれ日を見て、その長い石段を登って行くだけでも、なんとなく訪うものの心を....
「嵐」より 著者:島崎藤村
れから道路工事の始まっていた電車通りも石やアスファルトにすっかり敷きかえられて、
橡の並み木のすがたもなんとなく見直す時だ。私は次郎と二人でその新しい歩道を踏んで....
「くろん坊」より 著者:岡本綺堂
で、何ごころなく透かしてみると、そこの一面に生い茂っているすすきの奥に五、六本の
橡や栗の大木に取り囲まれた小屋のようなものが低くみえた。 「ともかくも行ってみよ....
「馬」より 著者:佐左木俊郎
うべ!」 伝平は手を叩くようにして言った。 伝平はそうして、七十円ばかりで、
橡栗毛の馬を一匹買ったのだった。残りの金では、馬小屋にも手入れをした。そして、伝....
「枯尾花」より 著者:関根黙庵
ると覚悟をすれば、何も畏れる事は無いと度胸を極め、或夜師の坊の寝息を考え、本堂の
橡の下に隠してある、例の待網を取出して彼の小溝へ掛けたが、今夜は如何した訳か、雑....
「ハイカラ考」より 著者:木村荘八
げく、束にして四斗樽に刀身を何本も差して、そのぎっしり日本刀のささった樽が、又、
橡の下に家中一杯だったという人である。「ハイカラ」とは一応対蹠的な、江戸藩の名士....
「明治懐顧」より 著者:上村松園
頃の円山公園は、祇園神社のすぐ北側が鬱蒼とした森で、小径がついていて、あの名高い
橡の近くに牡丹畑があり、そこに料亭があって牡丹畑というのでした。そこで開かれるの....
「「ケット」と「マット」」より 著者:喜田貞吉
その言う如く余程開けて来たには相違ないが、かつては粟、稗、玉蜀黍の類を常食とし、
橡の実を貯えるという風で、熊、猿、零羊を獲って里へ売りに出て、米を買って帰るくら....
「賤民概説」より 著者:喜田貞吉
あった。 家人、奴婢(官戸、官奴婢とも)は畢竟同じくヤッコであって、服装までも
橡黒衣を着せて良民と区別し、その子孫は特別の場合以外、永久にその主人に属すべき性....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
水を引き入れて、此処で落差百尺の水力を利用するのだそうな。前平沢の人家が朴の木や
橡の木の間にまばらに見える。田なども少しはあるが、如何にも寒村である。此処で是非....
「黒部川を遡る 」より 著者:木暮理太郎
潰れて段を成している所に茶屋があった。前には田なども作ってあり、対岸の尾沼谷には
橡の大木が多い。山頂は雲に掩われているが、日に照された谷の緑は燃えるように鮮かで....