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「此の世〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

此の世の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
俘囚」より 著者:海野十三
は、あたしには餓死だけが待っている。お馬鹿さんが引返して来る頃には、あたしはもう此の世のものじゃ無い。夫が死ねば、妻もまた自然に死ぬ! 夫の放言《ほうげん》が今....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
ございます。小ひと月も便りがありませんので、死骸は遠い沖へ流されてしまって、もう此の世にはいないものと諦めて居りましたのに、それが不意に出て来まして、しかもここ....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
出ない」 奉行所でこう訊問された時に、かれは涙をながして答えた。 「わたくしが此の世に居りませんと、もう誰も松蔵の墓参りをしてくれる者がございませんから」 ....
麻雀殺人事件」より 著者:海野十三
尾に握られたものがあったのではあるまいか。刑事が行き合わなかったら、星尾はすでに此の世の人でなかったかも知れないのである。 そう考えると、彼は星尾に会って問い....
空襲葬送曲」より 著者:海野十三
の度ごとに、 「キャーッ」 「こ、こ、こ、殺して呉れッ」 「あーれーッ」 と、此の世の声とは思えぬ恐ろしい悲鳴が聞えた。阿鼻叫喚とは、正に、その夜のことだった....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
れから十年の後で、あたかも日清戦争が終りを告げた頃であった。Kのおじさんは、もう此の世にいなかった。半七は七十を三つ越したとか云っていたが、まだ元気の好い、不思....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
と、半七は笑った。「源右衛門という寺男は駈け落ちをしたと云うが、可哀そうに、もう此の世にはいねえだろう」 「坊主共が殺ったのかね」 「手をおろした訳でもあるめえ....
中国怪奇小説集」より 著者:岡本綺堂
口実であることは大抵想像されているものの、何分にも旅さきの事といい、その妻ももう此の世にはいないので、事実の真偽を確かめるのがむずかしく、たがいに捫着をかさねた....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
出して来た人たちである事を記憶しなければならない。わたしは明治になってから初めて此の世の風に吹かれた人間であるが、そういう人たちにはぐくまれ、そういう人たちに教....
真鬼偽鬼」より 著者:岡本綺堂
「旦那の御|吟味は違っております。これではわたくしが浮かばれません。」 それは此の世の人とも思われないような、低い、悲しい声であった。秋山は思わずぞっとして振....
或る秋の紫式部」より 著者:岡本かの子
式部「そうだよ。こういう時代の人間は、あれほどの骨折をしながら、人間の中に何か此の世に引き付けられるものが漉き込まれていて、解脱が手の届くところまで来ていても....
褐色の求道」より 著者:岡本かの子
ないと朝飯が落着かないくらいです。然し自転車というものを見ると実に何とも言えない此の世に嫌気がさします。 冬中はまだいいのです。伯林の市中で雪掻き人夫を使いま....
取返し物語」より 著者:岡本かの子
おくみ『何のことでございます』 蓮如『そなたに取ってあの世の往生は定まった。然し此の世でいっち慕わしいお人に逢わんで往んでも大事ないか』 おくみ『あれ、御慈悲の....
母と娘」より 著者:岡本かの子
のですよ。ママ一面の真理があると思うの? アア書き落した一大事があるのよ。其れは此の世界一の楽園に水が欠乏して居る事よ。一杯の水を飲もうとしても数百年前に出来た....
」より 著者:岡本かの子
う処に考えが落着いて居る。 義務とか、道徳とか名付けられない心の方向が、確かに此の世の中の人達の行為を支配して居る。加奈子はそれを疑うまいと結局の考えに落着く....