殊更[語句情報] »
殊更
「殊更〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
殊更の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
防風林の細長い木立ちだけだった。ぎらぎらと瞬《またた》く無数の星は空の地《じ》を
殊更《ことさ》ら寒く暗いものにしていた。仁右衛門を案内した男は笠井という小作人で....
「野菊の墓」より 著者:伊藤左千夫
心のありたけを言い得ぬまでになっている。おのずから人前を憚《はばか》り、人前では
殊更に二人がうとうとしく取りなす様になっている。かくまで私心《わたくしごころ》が....
「水害雑録」より 著者:伊藤左千夫
最も臆病に、最も内心に恐れておった自分も、側から騒がれると、妙に反撥心が起る。
殊更に落ちついてる風をして、何ほど増して来たところで溜り水だから高が知れてる。そ....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
つでも胸の中を戦慄させていねばならぬ不安も知っている。苦肉の策から、自分の弱味を
殊更に捨て鉢に人の前にあらわに取り出して、不意に乗じて一種の尊敬を、そうでなけれ....
「階段」より 著者:海野十三
所長とが覘っていたのに相違ない。犯人はそれを明らさまに他人に悟られることを恐れ、
殊更図書室の二階か一階かとなりの事務室かに蟠居して、その秘密を取り出すことを覘っ....
「鬼仏洞事件」より 著者:海野十三
、あっと声をあげるところだった。それを、ようやくの思いで、咽喉の奥に押しかえし、
殊更かるい会釈で応えて、その場を足早に立ち去った。しかし、彼女の心臓は、早鉦のよ....
「宇宙尖兵」より 著者:海野十三
火星においてだろうね」 といったが、そういった後で、彼は自分の亢奮してくるのを
殊更に抑えようと努めている風に見えた。 「火星においてか。われらが火星に到着する....
「元禄時代小説第一巻「本朝二十不孝」ぬきほ(言文一致訳)」より 著者:井原西鶴
をおっかけて行く、まだ九つ許りの娘の分際でこんな事を親に進めたのは大悪人である。
殊更、熊野の奥の山家に住んで居るんだから、干鯛が木になるものだか、からかさは何に....
「北斗帖」より 著者:違星北斗
。そして住み心地よい北海道、争闘のない世界たらしめたい念願が迸り出るからである。
殊更に作る心算で個性を無視した虚偽なものは歌いたくないのだ。 はしたないアイヌだ....
「茶の湯の手帳」より 著者:伊藤左千夫
底一般社会の遊事にはならぬというのと、一は茶事などというものは、頗る変哲なもの、
殊更に形式的なもので、要するに非常識的のものであるとなせる等である、固より茶の湯....
「髷」より 著者:上村松園
かの見別けがつかなくなった。 いまの女性は、つとめてそういったことをきらって、
殊更に花嫁時に花嫁らしい髪をよそおうのを逃げているようである。 夫人かとみれば....
「画道と女性」より 著者:上村松園
やいでいるのと対照させて、新規の方は努めて地味な色合を選んで採り合わせ、萩の葉も
殊更に写生の色を避けていっさい緑青気の生々しいものを使わず、葉の数なども実際のも....
「押しかけ女房」より 著者:伊藤永之介
のなかで、また夜店の前で、この二組は不思議に何度も行き会つた。その度に、娘たちが
殊更に狼狽の様子を見せたり、誘いかけるように振り返つたりすることで、佐太郎はその....
「罪人」より 著者:アルチバシェッフミハイル・ペトローヴィチ
隠そうとしている。さて黒の上衣を着る。髯を綺麗に剃った顋の所の人と違っている顔が
殊更に引き立って見える。食堂へ出て来る。 奥さんは遠慮らしく夫の顔を一寸見て、....
「茂吉の一面」より 著者:宇野浩二
きり分かるではないか、専門家でも書けないような、すぐれた「解説」ではないか。私が
殊更に全文を引用したのは、いかに茂吉が美術の方にも卓越した観照眼を持っていたかを....