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残す
「残す〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
残すの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
らぎも》を挫がれた新蔵は、もう五分とその場に居たたまれず、捨台辞《すてぜりふ》を
残すのもそこそこで、泣いているお敏さえ忘れたように、蹌踉《そうろう》とお島婆さん....
「或る女」より 著者:有島武郎
《たお》すのだ。なんの躊躇《ちゅうちょ》。なんの思案。倉地が去った人たちに未練を
残すようならば自分の恋は石や瓦《かわら》と同様だ。自分の心で何もかも過去はいっさ....
「小さき者へ」より 著者:有島武郎
暗くする事を恐れ、お前たちの伸び伸びて行かなければならぬ霊魂に少しでも大きな傷を
残す事を恐れたのだ。幼児に死を知らせる事は無益であるばかりでなく有害だ。葬式の時....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
い。私は明かにそれらのものを私自身に与えているのだ。私は小鳥とその所有物の凡てを
残すところなく外界から私の個性へ奪い取っているのだ。見よ愛は放射するエネルギーで....
「クララの出家」より 著者:有島武郎
ば、主よ、アグネスをも召し給え」 クララは軽くアグネスの額に接吻した。もう思い
残す事はなかった。 ためらう事なくクララは部屋を出て、父母の寝室の前の板床に熱....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
、あとには水中に溶けていた塩類と、浮遊していた固体の微粒子から成る土壌様の皮殻を
残すということの経験は恐らく既に早くからあったのであろう。 この考えを裏書する....
「去年」より 著者:伊藤左千夫
る何らかの制度を設けて、この不公平を矯めるのが当然だ。第二の社会に自分の後継者を
残すのは現社会の人の責任だ。だから子を育てないやつからは、少くもひとりについてひ....
「橋」より 著者:池谷信三郎
らの実在性を感じないのです。彼女は自分の唇の紅がついたハンケチさえ、私の手もとに
残すことを恐れていました。だから、彼女がすばらしい嘘をつくとしても、それは彼女自....
「中支遊記」より 著者:上村松園
三寸に梳れる程の髪を残してあとは丸坊主の子、辮髪風に色の布で飾ったお下げを左右に
残すもの、或は片々だけに下げているもの。絵にある唐子の姿で今も南京上海の街、田舎....
「J・D・カーの密室犯罪の研究」より 著者:井上良夫
毒薬なりが被害者を狂気にして、部屋の中を掻き乱させ格闘でも演じられたような形跡を
残す。揚句の果当人はナイフで自らを刺したりなどして死ぬ。この種の変形には、シャン....
「註文帳」より 著者:泉鏡花
、縦横に乱れ合った足駄|駒下駄の痕も、次第に二ツとなり、三ツとなり、わずかに凹を
残すのみ、車の轍も遥々と長き一条の名残となった。 おうおうと遠近に呼交す人声も....
「迷信解」より 著者:井上円了
人を救助せしことなきや』と。迷信家曰く、『すでに死の定まれるを聞きたれば、財産を
残すの必要なきを悟り、これをことごとく人に施与して貧民の救助に用いたり』と。筮者....
「二葉亭追録」より 著者:内田魯庵
』も『其面影』も『平凡』も皆未完成の出来損ないである。あの三作で文人としての名を
残すのは仮令文人たるを屑しとしなくてもまた遺憾であったろう。 結局二葉亭は日本....
「私の履歴書」より 著者:井上貞治郎
る。そんな意味で、私も時代の子であったのかもしれない。 お雪との生活の思い出を
残す世帯道具をいっさい売払い、私は御堂筋で二円のカーキ色の兵隊服を買い、龍田川丸....
「本所両国」より 著者:芥川竜之介
した浪のために舟のゆれることを恐れたものである。しかし今日の大川の上に大小の浪を
残すものは一々数えるのに耐えないであろう。 僕は船端に立ったまま、鼠色に輝いた....