沈丁花[語句情報] »
沈丁花
「沈丁花〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
沈丁花の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「新生」より 著者:島崎藤村
た。その中からは銀杏《いちょう》、椿、山茶花《さざんか》、藤、肉桂《にくけい》、
沈丁花《じんちょうげ》なぞの実も出て来た。
老婦人は岸本に向って、東京にある姪....
「少女病」より 著者:田山花袋
に入らなくとも、路から庭や座敷がすっかり見えて、篠竹の五、六本|生えている下に、
沈丁花の小さいのが二、三株咲いているが、そのそばには鉢植えの花ものが五つ六つだら....
「支倉事件」より 著者:甲賀三郎
小林貞の暴行事件の真相だけだった。 話は三年前に溯る。 真白に咲き乱れた庭の
沈丁花の強烈な香が書斎に押寄せて来て、青春の悩みをそゝり立てるような黄昏時だった....
「田舎教師」より 著者:田山花袋
人の心を動かした。 写生帳には瓶の梅花、水仙、学校の門、大越の桜などがあった。
沈丁花の花はやや巧みにできたが、葉の陰影にはいつも失敗した。それから緋縅蝶、紋白....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
。丸髷や紋付は東京から墓参に来たのだ。寂しい墓場にも人声がする。線香の煙が上る。
沈丁花や赤椿が、竹筒に插される。新しい卒塔婆が立つ。緋の袈裟かけた坊さんが畑の向....
「巴里祭」より 著者:岡本かの子
度は眼の裏のまぼろしに綺麗な水に濡れた自然の手洗石が見え南天の細かい葉影を浴びて
沈丁花が咲いて居る。日本の静かな朝。自分の家の小庭の手洗鉢の水流しのたゝきに五六....
「旧聞日本橋」より 著者:長谷川時雨
な形に描いて、昨日の続きの出たらめ話をしているときだった。 「金坊《きんぼう》、
沈丁花《ちょうじ》の油をつけてきたね。」 と通りがけに先生が言った。金坊とよばれ....
「桃のある風景」より 著者:岡本かの子
てあげるから、それを食べてご覧よ。きっと、そこへしこってる気持がほごれるよ。」「
沈丁花の花の干したのをお風呂へ入れてあげるから入りなさい。そりゃいい匂いで気が散....
「入梅」より 著者:久坂葉子
敷に入った。二三日つづきそうな雨だった。植木が、つやつやした葉をして、その奥から
沈丁花の香りが、かすかに流れて来た。 〈昭和二十五年八月〉....
「歯車」より 著者:芥川竜之介
に向っていた。僕はペンを休める度にぼんやりとこの雪を眺めたりした。雪は莟を持った
沈丁花の下に都会の煤煙によごれていた。それは何か僕の心に傷ましさを与える眺めだっ....
「崖下の池」より 著者:豊島与志雄
ラックで運んできました。楓、桜、梅、檜葉、梔子《くちなし》、無花果《いちぢく》、
沈丁花、椿など、雑多な樹木で、熊笹の数株まで添えてありました。清水恒吉は全く快心....
「血曼陀羅紙帳武士」より 著者:国枝史郎
立っている村落からは、犬の吠え声と鶏の啼き声とが聞こえ、藁家の垣や庭には、木蓮や
沈丁花や海棠や李が咲いていたが、紗を張ったような霞の中では、ただ白く、ただ薄赤く....
「春」より 著者:岡本かの子
。桜は病院のうしろの方に在るらしい。四方一帯、春昼の埃臭さのなかに、季節に後れた
沈丁花がどんよりと槙の樹の根に咲き匂っている。 古ぼけた玄関。老い呆けた下足爺....
「レモンの花の咲く丘へ」より 著者:国枝史郎
、絹の薄物をゆったりと肩から垂れたばかりの朝姿で、アルハラヤ月草や、こととい草や
沈丁花の花の間を、白鳥よりもしなやかに歩き廻った。そして花弁に溜った露の滴を、百....
「落日の光景」より 著者:外村繁
院の構内に沿って左折した時、道路に面したその石垣の上に、いずれも夥しい花をつけた
沈丁花が植込まれているのが、私の目に入った。一瞬、私は噎《む》せ返るような、沈丁....