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沈吟
「沈吟〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
沈吟の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「十円札」より 著者:芥川竜之介
野さんは保吉の教科書を前に、火の消えたパイプを啣《くわ》えたまま、いつもちょっと
沈吟《ちんぎん》した。それからあたかも卒然《そつぜん》と天上の黙示《もくじ》でも....
「路上」より 著者:芥川竜之介
が――」
大井は海老茶色の幕へ手をかけたまま、ふらつく足を踏みしめて、しばらく
沈吟《ちんぎん》していたが、やがて俊助の鼻の先へ酒臭い顔を持って来ると、
「君は....
「義血侠血」より 著者:泉鏡花
ありましたか」 「ない!」と馭者は頭《かしら》を掉《ふ》りぬ。 白糸はしばらく
沈吟したりしが、 「あなた、こんなことを申しちゃ生意気だけれど、お見受け申したと....
「旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
とうに、黙然とやや暫し、そこに佇《ただず》みながら、血刀をさげたままで、何ごとか
沈吟しているもののようでしたが、と見て、塀の上からおどりおりつつ、駈けよって来た....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
うはく》の度を加え、烱々たるまなざしが静かに徐々に閉じられて、やがてのことに深い
沈吟が始められたのはあたりまえなことでした。 そして、一瞬! やがて、二瞬!....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
迷宮にはいったのを知って、まゆを強く一文字によせ、そのやや蒼白《そうはく》な面に
沈吟の色を見せながら、雲霧の中に小さな玉を探ろうとするように、じっとくちびるを結....
「支倉事件」より 著者:甲賀三郎
車があったかなかったか、記憶が曖昧模糊としていたのではないかと思う。支倉は獄中で
沈吟して、どうも当時電車はなかったらしいと思ううちに、だんだんない方に自信が出て....
「家」より 著者:島崎藤村
た。 「十一時過ぎました」と正太は懐中時計を出して見て答えた。 しばらく正太は
沈吟するように部屋の内を歩いて見た。やがて、玻璃障子の閉めてあるところへ行って、....
「霜凍る宵」より 著者:近松秋江
層ややこしゅうござります」 と、ようやく我に返った調子で、ひとり語のようにいって
沈吟している。 私はしばらく口を噤んで二人の話をじっと聴きながら最初は自分の耳....
「小説 不如帰 」より 著者:徳冨蘆花
て久しき川島家の門を入りぬ。あたかも叔母がひとり武男の書状を前に置きて、深く深く
沈吟せるところに行きあわせつ。 「いや、一向|捗がいきませんじゃ。金は使う、二月....
「万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
の歌はあっさりとしているようで唯のあっさりでは無い。そして軽浮の気の無いのは独り
沈吟の結果に相違ない。 ○ 丈夫は名をし立つべし後の代に聞....
「作家の像」より 著者:太宰治
なんの随筆の十枚くらい書けないわけは無いのであるが、この作家は、もう、きょうで三日も
沈吟をつづけ、書いてはしばらくして破り、また書いては暫くして破り、日本は今、紙類....
「銅銭会事変」より 著者:国枝史郎
が周章てている。七日の間に某所へ集まり、敵の本陣を突くという意味だ」 甲斐守は
沈吟した。 「解ったようで解らない。だがともかくも今度の事件が、銅銭会という秘密....
「少年連盟」より 著者:佐藤紅緑
、食物を運んでやったが、かれはほとんど一口もふれず、ただ頭をたれてなにごとか深く
沈吟思考している。 少年たちにとって、目下の急務である第一問題は、海|蛇らがど....
「二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
た。この名を墓標に勒するは故人の本意でないかも知れぬので、三山は筆を持って暫らく
沈吟したが、シカモこの名は日本の文学史に永久に朽ちざる輝きである。二葉亭は果して....