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「沈着〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

沈着の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或敵打の話」より 著者:芥川竜之介
を嘗《な》めさせた彼自身の怨敵《おんてき》であった。――甚太夫はそう思うと、日頃沈着な彼にも似合わず、すぐさま恩地の屋敷へ踏みこんで、勝負を決したいような心もち....
或る女」より 著者:有島武郎
べき言葉もなかった。あせる気を押し鎮《しず》め押ししずめ、顔色を動かさないだけの沈着を持ち続けようとつとめたが、今までに覚えない惑乱のために、頭はぐらぐらとなっ....
或る女」より 著者:有島武郎
い態度で、柔順に無表情に縁板の上にちょっと膝《ひざ》をついて挨拶した。しかしその沈着にも係わらず、葉子は愛子が今まで涙を目にためていたのをつきとめた。岡も愛子も....
灰燼十万巻」より 著者:内田魯庵
/\に火鉢を央に陣取ってる群が其処にも此処にも団欒していた。みんなソワ/\して、沈着いてる顔は一人も無かった。且|各自が囲んでる火鉢は何処からか借りて来たと見え....
駆逐されんとする文人」より 著者:内田魯庵
らない。乗るから降りるまで用心のしつゞけで労れて了う。 ▲自働車の上なら悠然と沈着て読書は本より禅の工風でも岡田式の精神修養でも何でも出来そうだが、電車は人間....
戦話」より 著者:岩野泡鳴
の如く降っとった。その間を平気で進んで来たものがあるやないか? たッた独りやに「沈着にせい、沈着にせい」と云うて命令しとる様な様子が何やらおかしい思われた。演習....
夜叉ヶ池」より 著者:泉鏡花
る。お百合を抱ける、学円と面を見合せ)何時だ。(と極めて冷静に聞く。) 学円 (沈着に時計を透かして)二時三分。 晃 むむ、夜ごとに見れば星でも了る……ちょうど....
革鞄の怪」より 著者:泉鏡花
と私は思わず慄然とした。 室内は寂然した。彼の言は、明晰に、口|吃しつつも流暢沈着であった。この独白に対して、汽車の轟は、一種のオオケストラを聞くがごときもの....
唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
ように、 「踏着けられた狗から見りゃ、頭を打つけるなんぞ何でもない。」 日頃、沈着な、謹み深いのがこれだから、余程|周章てたに違いない。 きゃんきゃんきゃん....
霊訓」より 著者:浅野和三郎
に至らなくとも、兎に角人々の道徳的均衡が覆されて居るのは、甚だ危険である。平静と沈着とは、悪魔を防ぐ為めの大切な楯で、一たんそれに隙間ができれば、未発達な悪霊ど....
謡曲仕舞など」より 著者:上村松園
の、あの華やかな姿勢に傾かぬように注意したものです。 仕舞というものは、とても沈着なものでして、些しの騒がしさなど混じっていないところに、その真価も特色もある....
斎藤緑雨」より 著者:内田魯庵
いうと寡言の方で、眼と唇辺に冷やかな微笑を寄せつつ黙して人の饒舌を聞き、時々低い沈着いた透徹るような声でプツリと止めを刺すような警句を吐いてはニヤリと笑った。 ....
三十年前の島田沼南」より 著者:内田魯庵
う気になれなかった。 が、この不しだらな夫人のために泥を塗られても少しも平時の沈着を喪わないで穏便に済まし、恩を仇で報ゆるに等しいYの不埒をさえも寛容して、諄....
二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
うが、三方四方の不平不満が一時に殺到する心的葛藤に忙殺されていては、虚心|坦懐に沈着いて推敲鍜練していられないのが当然であった。恐らく書肆に対する義理合上拠ろな....
戦争史大観」より 著者:石原莞爾
威力は頗る大きい。けれども地形の制限を受ける事多く、戦場ではほとんど盲唖である。沈着かつよく準備せられた軍隊に対しては左程猛威を逞しゅうし得るものではない。殊に....