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沈鬱
「沈鬱〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
沈鬱の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
務を果さねばならないのに気がついた。十四郎の寝間には、もう死の室《へや》のような
沈鬱さを、滝人は感じなかった。しかし、長針をぐるぐる廻して、それから、 「八――....
「家霊」より 著者:岡本かの子
のショックを与えるようになった。彼等は店の前へ来ると、暖簾の文字を眺めて青年風の
沈鬱さで言う。 「疲れた。一ついのちでも喰うかな」 すると連れはやや捌《さば》....
「死の快走船」より 著者:大阪圭吉
夫人は、まだ四十を幾つも越さぬらしい若々しさだ。大粒な黒眼に激しい潤いを湛えて、
沈鬱な口調で主人の上にふりかかった恐ろしい災禍について語るのだった。 私は夫人....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
台装置を想い出すけれども、そういう外見生動に乏しい基調色が、なおいっそうこの室を
沈鬱なものにしていた。ここもやはり、前室と同様荒れるに任せていたらしく、歩くにつ....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
能だけではなく、先天的にゴリラというやつは体質性の憂鬱症なのである。つまり、「|
沈鬱になり易い異常的傾向」がある。ああ、また鉛筆の芯が折れた。もう私は、これを書....
「愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
よりも、主観的に信念を鼓吹する教訓書である。敬虔にして愛情に富み、真率にしてやや
沈鬱なる氏の面影がいたるところに現われている。氏の哲学の特色はすでに述べたから、....
「岡本一平論」より 著者:岡本かの子
折も随分あるにはあります。 けれど、主人一平氏は家庭に於て、平常、大方無口で、
沈鬱な顔をして居ます。この
沈鬱は氏が生来持つ現世に対する虚無思想からだ、と氏はい....
「灰色の記憶」より 著者:久坂葉子
もしれないと云った。そして神経衰弱に罹ったように、絶えずいらいらしていた。確かに
沈鬱な家庭であった。大豆をゴリゴリひいたり、道端の草をゆでたり、そんなこと以外は....
「郊外」より 著者:国木田独歩
て何でしょう。』 『何だか知らない。何だってよいジャあないか。』 『だって何だか
沈鬱いでいるようだから……もしかと思って。』 『ああ少し寒くなって来た。』 二....
「穴」より 著者:黒島伝治
ことがなかった。彼等の顔には等しく、忍従した上に忍従して屈辱を受けつゞけた人間の
沈鬱さが表現されているばかりだ。老人には、泣き出しそうな、哀しげな表情があった。....
「博物誌」より 著者:岸田国士
、フィリップの悲しみは、仲間の一匹の苦しむ様子をそばで見ている動物のそれのように
沈鬱である。 彼の女房が朝のスープを持って来る。彼は腰掛に腰を下ろしたまま、ま....
「潜航艇「鷹の城」」より 著者:小栗虫太郎
に渦巻いて、鼻は鷹の嘴のように美しいが、絶えず顔を伏目に横へ捻じ向けていた。その
沈鬱な態度は、盲人としての理性というよりも、むしろ底知れない、こころもち暗さをお....
「地虫」より 著者:小栗虫太郎
、前にある煙突の林立も、およそ文化といい機械という雑色のなかにあってさえも、この
沈鬱の気を和らげるものではない。 ところが、四十町七丁目側の石崖が崩壊して、折....
「高原の太陽」より 著者:岡本かの子
それからしばらくして 「でないと僕は寂しいんです」 唐突でまるで独言のような
沈鬱な言葉の調子だ。かの女はこの青年がいよいよ不思議に思えた。 かの女は居坐り....
「青春の息の痕」より 著者:倉田百三
愛の誘われるような心地もいたします。 あなたと別れてから、私は急に淋しくなり、
沈鬱な気分におそわれ、とりとめもないメランコリーに身をまかせてしまいました。私が....