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泥沼
「泥沼〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
泥沼の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「高野聖」より 著者:泉鏡花
が、それにしても富山の薬売はどうしたろう、あの様子《ようす》ではとうに血になって
泥沼に。皮ばかりの死骸は森の中の暗い処、おまけに意地の汚《きたな》い下司《げす》....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
んだんに狭められたのだそうで、わたくしどもの知っている時分には、岸の方はもう浅い
泥沼のようになって、夏になると葦などが生えていました。それでも帯取りの池という忌....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
やっとゆけた道を、俺は、ズブズブ沼土を踏みながら十日で往ってしまったよ。つまり、
泥沼があれば偶然に避けている、危険個所と危険個所のあいだを千番のかね合いで縫って....
「電気風呂の怪死事件」より 著者:海野十三
はもう必然的の労働の様に、妙に亢揚した息使いで各々足の先で湯の中を探って廻った。
泥沼に陥没しかかった旅人のように、無暗矢鱈に藻掻き廻るその裸形の男三人、時に赤鬼....
「省線電車の射撃手」より 著者:海野十三
通りかかるとひっかからずには居られない陥穽や、飛びこむと再び外へ出られないような
泥沼を用意して置いたのです。ひっかかったものが不運なんです。私も貴方同様に手も足....
「光の中に」より 著者:金史良
なるまいとどうして僕はいつもいきまいていなければならないんだ。それが却って卑屈の
泥沼に足をつっ込み始めた証拠ではないか……」 だが私はしまいまでを云い切る勇気....
「夜叉ヶ池」より 著者:泉鏡花
も、水の底へ沈んでしまう…… 蟹五郎 何が、何が、第一俺が住居も広うなる……村が
泥沼になるを、何が遠慮だ。勧めろ、勧めろ。 鯉七 忘れたか、鐘がここにある。……....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
正しく、膝のあたりまで手を垂れて、 「はい、申されまする通り、世がまだ開けませぬ
泥沼の時のような蘆原でござるわや。 この川沿は、どこもかしこも、蘆が生えてある....
「紅毛傾城」より 著者:小栗虫太郎
らしいのである。 しかし、そうして事新しく、その二冊を手にしたとき、これこそ、
泥沼に埋もれつつある石碑の一つだと思った。 それは以前、合衆国マサチュセッツ州....
「人魚謎お岩殺し」より 著者:小栗虫太郎
ると、逢痴に対する愛着が、まったく厭わしいものになってしまって、再び彼は、昏迷の
泥沼へ深く沈みゆくのであった。 それは、往々に壮年者が見る、忌わしい艶夢のよう....
「夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
る。鶴見はここにも歓喜の予感を貪り求める。そしてみずからを大虫に擬して、原始的の
泥沼のなかを這い廻ることすら厭わない。そしてまた一回の苦行が終り、その贖いの歓喜....
「銀三十枚」より 著者:国枝史郎
い? 説明しよう。こういう訳だ。虹と宝石と香水と、こういう物に蔽われている、深い
泥沼があったとしたら、誰だって住むのは厭じゃアないか。孑孑でない限りはね。ところ....
「歌の円寂する時」より 著者:折口信夫
子規の歌の暗示 子規は月並風の排除に努めて来た習わしから、ともすれば、脚をとる
泥沼なる「さび」に囚われまいと努め努めして、とどのつまりは安らかな言語情調の上に....
「子をつれて」より 著者:葛西善蔵
ものの本体というものが解らないのだ。がその本体の前にじり/\引摺り込まれて行く、
泥沼に脚を取られたように刻々と陥没しつゝある――そのことだけは解っている。けれど....
「夜の構図」より 著者:織田作之助
ちに澄んでいた。信吉はふと新内語りの、どろんと濁った眼を想い出した。デカダンスの
泥沼のようなその眼と、泉のように澄んだ冴子の眼! 信吉は冴子に会いたくなったの....