» 洩す

「洩す〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

洩すの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
秋山図」より 著者:芥川竜之介
ほとんど処子《しょし》のように、当惑そうな顔を赤めました。が、やっと寂しい微笑を洩すと、おずおず壁上の名画を見ながら、こう言葉を続けるのです。 「実はあの画を眺....
大島が出来る話」より 著者:菊池寛
違なかった。 「何だ! 大島を着て居るじゃないか。」と、譲吉が思わず嘆賞の言葉を洩すと、杉野は、 「何うだ、全盛だろう。」と、一寸《ちょっと》得意そうな顔をした....
恩を返す話」より 著者:菊池寛
られるたびに、惣八郎は「われらがごとき」といって謙遜した。しかし、その言葉の後に洩す微笑は、その言葉の文字通りの意味を取り消していると噂された。が、二人は道で会....
青春の逆説」より 著者:織田作之助
「表へ出くされ!」柄のわるい妙な大阪訛で男がいった。これは聴き洩さなかった。聴き洩すと、恥になる。豹一は伝票を掴んで立ち上った。 勘定を払って表へ出ると、男は....
空襲葬送曲」より 著者:海野十三
原大尉!」キビキビした参謀の声が聴えた。 帝都二百万の住民は、この一語も、聞き洩すまいと、呼吸を詰めた。 「信ずべき筋によれば」参謀の声は、余裕綽々たるものが....
三浦老人昔話」より 著者:岡本綺堂
が、何かのついでには其話をして、市川の仕付方はどうも面白くないと云うような不満を洩すので、それが自然に伝わって、武家の子どもはだん/\に減るばかり。二月三月の後....
宇宙尖兵」より 著者:海野十三
がましく延期を求めたが、博士は気の毒そうな顔で首を左右にふった。 「この機密が漏洩することを極端におそれるのです。さっきも念を推しておいたが、このことは誰に対し....
みさごの鮨」より 著者:泉鏡花
ああ、それだ。 小鬢に霜のわれらがと、たちまち心着いて、思わず、禁ぜざる苦笑を洩すと、その顔がまた合った。 「ぷッ、」と噴出すように更に笑った女が、堪らぬとい....
茸の舞姫」より 著者:泉鏡花
光る。……歯が鳴り、舌が滑に赤くなって、滔々として弁舌鋭く、不思議に魔界の消息を洩す――これを聞いたものは、親たちも、祖父祖母も、その児、孫などには、決して話さ....
死者の書」より 著者:折口信夫
も、寂しいとも思わぬ習慣がついて居た。其で、この山陰の一つ家に居ても、溜め息一つ洩すのではなかった。昼の内此処へ送りこまれた時、一人の姥のついて来たことは、知っ....
初雪」より 著者:秋田滋
来た。ちょっと立ちどまって散歩をしている人たちを眺めていたが、やがて微かな笑みを洩すと、いかにも大儀そうに、海のほうに向けて据えてある空いたベンチのところまで歩....
南極の怪事」より 著者:押川春浪
げられたる一個の船燈のみが、消えなんとしていまだ消えず、薄気味悪き青光をかすかに洩すのみ、時刻も分らず場所も分らず、時計を出して見るに、その針はすでに停まりいた....
褐色の求道」より 著者:岡本かの子
いて来ていた。それを越して眺められる町の屋根から空も、寒さに張り詰めた息をすこし洩す緩やかな光が添った。だが冬の続きの白雲はまだ青空に流水の険しさを見せて、層々....
磯部の若葉」より 著者:岡本綺堂
く迷っている。疲れた人のような五月の空は、時々に薄く眼をあいて夏らしい光を微かに洩すかと思うと、またすぐに睡むそうにどんよりが勇ましく歌っても、雀がやかましく囀....
仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
す。時たま喧嘩することもありましょう、恨み嫉むこともありましょう、また不平不満を洩すこともありましょう、がしかし彼らは決して離れられないのであります。どんなにし....