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浮べる
「浮べる〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
浮べるの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「戯作三昧」より 著者:芥川竜之介
な傾向がある。彼はこの風呂の湯気の中に、彼が描こうとする小説の場景の一つを、思い
浮べるともなく思い浮べた。そこには重い舟日覆《ふなひおい》がある。日覆の外の海は....
「お時儀」より 著者:芥川竜之介
たり、電車に乗っていたりする間《あいだ》にふと過去の一情景を鮮《あざや》かに思い
浮べることがある。それは従来の経験によると、たいてい嗅覚《きゅうかく》の刺戟から....
「誘惑」より 著者:芥川竜之介
後ろを向いた船長の上半身。船長は肩越しに何かを窺《うかが》い、失望に満ちた苦笑を
浮べる。それから静かに顋髯《あごひげ》を撫《な》でる。
70
前の洞....
「浜菊」より 著者:伊藤左千夫
だけ猶《なお》強く聞える。音から聯想《れんそう》して白い波、蒼《あお》い波を思い
浮べると、もう番神堂が目に浮んでくる。去年は今少し後であった。秋の初め、そうだ八....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
らいたためである。訳しながらも時々この二〇年の昔に見た童顔に浮ぶ温雅な微笑を思い
浮べるのであった。 この書の翻訳としては先に亡友一戸直蔵君の『宇宙開闢論史』が....
「蠅男」より 著者:海野十三
いたんじゃ、脳味噌に黴が生えちまう」と憂鬱そうに呟いたが、間もなくニヤリと笑みを
浮べると、「看護婦さん、すまないが大急ぎで、電報を一つ打ってきて下さい」 痛そ....
「地球盗難」より 著者:海野十三
四角な鞄をかけていた。武夫の争闘した草叢の方を見て、ニヤリと薄気味のわるい笑いを
浮べると、そのまま雑草を踏みわけて、奥の方へドンドン入っていった。 その怪しい....
「流線間諜」より 著者:海野十三
の次は、敵の拳銃の的になるばかりだ。 「折れた紫陽花」はニヤリと意地わるい笑みを
浮べると、重い拳銃の口を帆村の背中に擬した。あッ、危い! その一刹那のことであ....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
か、破鐘のようなる声して、 「泳ぐもの、帰れ。」と叫んだ。 この呪詛のために、
浮べる輩はぶくりと沈んで、四辺は白泡となったと聞く。 また十七ばかり少年の、肋....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
果なる海の上に、落ち行く日の紅のかがみに映って、そこに蟠った雲の峰は、海月が白く
浮べる風情。蟻を列べた並木の筋に……蛙のごとき青田の上に……かなたこなた同じ雲の....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
城時代の事に向いますと、良人の様子が急に沈んで、さも口惜しいと言ったような表情を
浮べるのでした。『これは良けない……。』私は急いで話を他に外らしたことでございま....
「取舵」より 著者:泉鏡花
のだ。乗合もそれは目出度と言うので、いくらか包んで与る者もあり、即吟で無理に一句
浮べる者もありさ。まあ思い思いに祝ッてやったと思いたまえ。」 例の饒舌先生はま....
「ファラデーの伝」より 著者:愛知敬一
たり、電池を取りかえたりする。それで、思い通りの結果が出て来ると、顔に得意の色を
浮べる。もし疑わしくなると、額が曇って来る。考えた事の不充分のために、うまく行か....
「春昼後刻」より 著者:泉鏡花
に宿る月の影、雲の鬢、簪の星、丹花の唇、芙蓉の眦、柳の腰を草に縋って、鼓草の花に
浮べる状、虚空にかかった装である。 白魚のような指が、ちょいと、紫紺の半襟を引....
「四十年前」より 著者:内田魯庵
あって、天下の青年は翕然として文学の冒険に志ざした。 当時の記憶は綿々として憶
浮べるままを尽くいおうとすれば限りがない。その頃一と度は政治家たらんと欲し、転じ....