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消え入る
「消え入る〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
消え入るの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
だった。お蓮は不思議に思うよりは、嬉しさに心を躍《おど》らせながら、そのまま体も
消え入るように、男の頸《くび》へすがりついた。しかし眠を破られた男が、うるさそう....
「藤十郎の恋」より 著者:菊池寛
振られ申したわ。ははははははは。 お梶 (ふと顔を上げる。必死な顔色になる。低い
消え入るような声で)それでは藤様、今おっしゃったことは皆本心かいな。 藤十郎 (....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
ます……」 はらはらとたまりかねたように、とつぜん露のしずくをひざに散らすと、
消え入るように打ちあけました。 「お騒がせいたしましてあいすみませぬ。ご慈悲おか....
「日本山岳景の特色」より 著者:小島烏水
からと鳴るかと思われ、春から夏にかけて、水蒸気の多い時分には、柔々《やわやわ》と
消え入るように、または凧《たこ》の糸のように、のんびりしている。地平線と水平線と....
「恐怖城」より 著者:佐左木俊郎
正勝は横から説明した。 「婆さん! おまえさんかね?」 「はあ!」 婆やは
消え入るようにして言った。 「それで、おまえさんがこの部屋へ入ってきたとき、この....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
。それは漂浪の人がはるかに故郷の空を望んだ時のようななつかしい感じを与える。その
消え入るような、さびしい、さえた音がことになつかしい。不思議な誘惑の世界から突然....
「クララの出家」より 著者:有島武郎
た。胸から下の肢体は感触を失ったかと思うほどこわばって、その存在を思う事にすら、
消え入るばかりの羞恥を覚えた。毛の根は汗ばんだ。その美しい暗緑の瞳は、涙よりもも....
「旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
」 「………」 「番頭と申すにきこえぬか」 「………」 「あい……」 やさしく
消え入るように答えてそこに三ツ指ついたのは、前夜のあのいぶかしい若者ならで、ちま....
「旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
おししがやりたい……」 主水之介の目が簾垂れの中で、思わずピカリと光りました。
消え入るような声で恥じらわしげに、おししがやりたいと言ったその声は、何ともかとも....
「十万石の怪談」より 著者:佐々木味津三
、さっと左右から障子を押し開いた刹那、――ぺたぺたと崩れ伏すように影が膝を折ると
消え入るような声で言った。 「おそなわりまして厶ります……」 ....
「加利福尼亜の宝島」より 著者:国枝史郎
いる態は、鬼々陰々たるものである。 と見ると老人の足もとに深い穴が掘ってある。
消え入るような悲しそうな声で何やら老人は話しかけた。しかし紋太夫には解らない。彼....
「蜜柑」より 著者:佐左木俊郎
ぢ、田畑の仕事は片付いてしまったがあ。」 お婆さんは静かに寝がえりながら、低い
消え入るような声で吐切れ吐切れに言った。お美代は茶碗を取ってお婆さんの方へ出した....
「なよたけ」より 著者:加藤道夫
かうは 時の音の ひびかうは 時の音の 無明に刻む 斧の音…… わらべ達の声 (
消え入るように、遠く微かに……)さようなら! 文麻呂! さようなら! 文麻呂!…....
「藤十郎の恋」より 著者:菊池寛
いた女は、ふと面を上げた。 「藤様、今|仰った事は、皆本心かいな」 女の声は、
消え入るようであった。その唇が微かに痙攣した。 「何の、てんごうを云うてなるもの....
「審判」より 著者:カフカフランツ
と考える余裕を与えてやろう、という様子だった。 「いったい誰のことなんだ?」と、
消え入るような声で弁護士はきき、また身体を横にした。 「わしの甥なんだよ」と、叔....