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涙する
「涙する〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
涙するの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「婦系図」より 著者:泉鏡花
空色の、瞼を染めて、浅く圧えた襦袢の袖口。月に露添う顔を見て、主税もはらはらと落
涙する。 「世迷言を言うなよ。」 と膠もなく、虞氏が涙を斥けて、 「早瀬どうだ....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
あの老人のことですから、山吹に神社ができて平田先生なぞを祭ると知ったら、きっと落
涙するでしょう。」 「喜びのあまりにですか。そりゃ、人はいろいろなことを言います....
「縮図」より 著者:徳田秋声
いて来た二人の子供のことを憶い出すと、荊で鞭打たるるように心が痛み、気弱くも枕に
涙することもしばしばであった。しかしほとんど酷薄ともいえる養家の仕打ちに対する激....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
日燈籠の立った紅葉山人の墓が、突と眼の前に現われた。忽ち其墓の前に名刺を置いて落
涙する一|青年士官の姿が現われる。それは寄生木の原著者である。あゝ其青年士官――....
「恐竜島」より 著者:海野十三
の国をおもい、古今《ここん》を通じて流れるはるかな時間をわが短い生命にくらべて、
涙することもあった。 航路は三日以後は熱帯《ねったい》に入り、それからのちはほ....
「松の操美人の生埋」より 著者:三遊亭円朝
じます」 と席を下りまして、日頃は猛き山三郎暫くの間|頭を上げません。 宮「落
涙するか、何か気になる事だな、そう云う事を云われると何だか遣りとうもないが、止さ....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
ように覚えている、谷の主とも謂いつべき居てつきの媼、いつもその昔の繁華を語って落
涙する。今はただ蚊が名物で、湯の谷といえば、市の者は蚊だと思う。木屑などを焼いた....
「鳴雪自叙伝」より 著者:内藤鳴雪
に乗って、京都をさして上ることになった。三津までは親類も送って来た。別を惜んで落
涙する者もあった。この海路は非常に風が悪かった。追手続きなれば三昼夜で大阪に這入....
「日記」より 著者:宮本百合子
五、二十二 故知らぬ 憂愁が心を喰み わたくしは
涙するようだ。 何卒、わが生命に価値あらせ給え なにとぞ わが日常に悦びあら....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
「でも不可いの、私は、愛吉が可愛くッて可愛くッて、」 廊下の外でもはらはらと落
涙する。 「可愛くッてならないの、だから奥さんになって殺されたんだわ、なぜこんな....
「土下座」より 著者:和辻哲郎
に置いてこれらの人々の心と思いがけぬ密接な交通をしているのを感じました。実際彼も
涙する心持ちで、じじいを葬ってくれた人々に、――というよりはその人々の足に、心か....
「三国志」より 著者:吉川英治
た。 玄徳は、関羽の子を見て、また涙を新たにした。 この大戦の門出に、余りに
涙することばかり多いので、近側の大将は、 「――龍涙地に落つるは亢旱三年、という....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
揺れやまぬ沢山な顔のうちでも、知り人の顔はすぐ眼にとまる。微笑で応えると、先も
涙するやら、胸に手を合せて、黙送の姿、さまざまだった。 「……や、菊王も」 そ....
「黒田如水」より 著者:吉川英治
ようがない」 初めは火のごとく罵り、後には水の咽ぶごとく、仮の法衣の袖口で、落
涙する面をかくした。 松千代が成敗されたことは、ひろく世間に信じられていた。ま....
「くせ」より 著者:吉川英治
万太郎は、放屁癖という人に迷惑なものを持っていた。あの謹厳な渡辺崋山に、飲むと落
涙する癖があり、尾崎紅葉はその反対に、飲むと江戸弁で啖呵を切る。近くは若槻前民政....