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「渋色〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

渋色の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
熊の出る開墾地」より 著者:佐左木俊郎
《はし》った。その上から黄色の葉が、ぱらぱらと午後の陽に輝きながら散りかかった。渋色の樹肌《きはだ》には真っ赤な蔦紅葉《つたもみじ》が絡んでいた。そして傾斜地を....
恐怖城」より 著者:佐左木俊郎
うに黒く、その梢《こずえ》の枯枝が白骨のように雨ざれていた。谷の上に伸びた樹木の渋色の幹には真っ赤な蔦《つた》が絡んでいたりした。馬車はぎしぎしと鳴り軋《きし》....
雪中富士登山記」より 著者:小島烏水
と匝《め》ぐって、黒い点となって、遥かに消え失せた。 頂上を仰ぐと、平ッたい赭渋色の岩の上に、黒く焦げた岩が、平板状に縞を作った火口壁が、手の達《とど》くほど....
朱日記」より 著者:泉鏡花
はない。不精で剃刀を当てないから、むじゃむじゃとして黒い。胡麻塩頭で、眉の迫った渋色の真正面を出したのは、苦虫と渾名の古物、但し人の好い漢である。 「へい。」 ....
蠅男」より 著者:海野十三
に身を沈めた。――と見るよりも早く、蠅男の隙を狙って寝台の下からパッと投げつけた渋色の投網! 網は空間に花火のように開いて、蠅男の頭上からバッサリ落ち掛ったが....
梅津只円翁伝」より 著者:杉山萠円
足袋。客が来るとその上からコオリ山(灰白色の紬の一種)の羽織を羽織った。 麻製渋色の胸当て(金太郎式の)は夏冬共に離さなかった。 ◇ 後....
谷より峰へ峰より谷へ」より 著者:小島烏水
る、鉱山発掘のあとの洞穴があって、その近傍だけは、木材を截って櫓井戸を組み合せ、渋色をした鉱気水が、底によどんでいる、暫らく休んで、鯊のつくだにで、冷たい結飯を....
怪塔王」より 著者:海野十三
い生ゴムでつくられてあり、例の汐ふきのような顔になっており、そして生ゴムの表面は渋色に染めてあった。マスクの合わせ目は、耳のうしろの頭髪の中にあって、このごろよ....
露肆」より 著者:泉鏡花
は被らず、頭髪を蓬々と抓み棄てたが、目鼻立の凜々しい、頬は窶れたが、屈強な壮佼。渋色の逞しき手に、赤錆ついた大出刃を不器用に引握って、裸体の婦の胴中を切放して燻....
」より 著者:寺田寅彦
ままを、日に当てても平気でいる。 着物は何処かの小使のお古らしい小倉の上衣に、渋色染の股引は囚徒のかと思われる。一体に無口らしいが通りがかりの漁師などが声をか....
雑記(Ⅱ)」より 著者:寺田寅彦
切子ガラスの花瓶に、時節の花が挿してあった。それがどんな花であっても純白の卓布と渋色のパネルによくうつって美しかった。ガラス障子の外には、狭い形ばかりの庭ではあ....
貞操問答」より 著者:菊池寛
」 「へえ。どんな書付?」 「これよ。」母は、うれしそうに、膝の上に置いてあった渋色になった、みの紙の書付をひらひら出して見せた。 一、金二十三円九十二銭也 ....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
で日の出温泉というのが目についたので、一汗流して行こうとなった。這入って見ると鉄渋色の鉱泉で、それも沸し湯だった。上って浴衣を借りると、実に薄汚なくてくしゃくし....
秋の鬼怒沼 」より 著者:木暮理太郎
ち並んでいる。其間に闊葉樹が黄や紅の冴えた色を丸くこんもりと盛り上げる。奥白根の渋色のドームが南の空に半ば雲に包まれている。行手には四郎岳らしい鈍円頂が雲から吐....
黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
分上流に来たなと首肯かせる。岩の色は一様ではないが皆花崗片麻岩だ。見る限り褐色や渋色をなすりつけた黒白斑の大岩塊が、縦に欹ち横に伏して、頭上二、三尺の高さに不恰....