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渓間
「渓間〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
渓間の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「交尾」より 著者:梶井基次郎
のなかでは瑠璃《るり》が美しく囀《さえず》っていた。瑠璃は河鹿と同じくそのころの
渓間をいかにも楽しいものに思わせる鳥だった。村人の話ではこの鳥は一つのホラ(山あ....
「菊模様皿山奇談」より 著者:三遊亭円朝
、拙者が化されていたのじゃ、茅屋があったと思う処が、矢張野原で、片方はどうどうと
渓間に水の流れる音が聞え、片方は恐ろしい巌石峨々たる山にして、ずうっと裏手は杉や....
「李陵」より 著者:中島敦
面罵《めんば》され、笞《むち》打たれた。それを含んでこの挙に出たのである。先日|
渓間《たにま》で斬《ざん》に遭った女どもの一人が彼の妻だったとも言う。管敢は匈奴....
「残されたる江戸」より 著者:柴田流星
も負けおしみして力んではいられず、塵埃に汚れたドス黯いのを見ようよりは遠く秩父の
渓間か、高雄山にこれを探るによろしく、これだけは大自慢の江戸ッ児全体が夙くから遺....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
たか、ハクバヶ岳《たけ》が通り名になってしまいました」 お花畑を出でると、雪の
渓間《たにま》がある、林泉がある、見慣れない獣《けもの》が、きょとんとして、こち....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
湯滝がありますから。湯滝は白骨にもありますが、あれよりズット大きい――といって、
渓間を導いて、兵馬を二つの滝が女夫《めおと》のように並んでいるところへ連れて来ま....
「郷土的味覚」より 著者:寺田寅彦
とが出来る。そうしてさらにのぞきや大蛇の見世物を思い出すことが出来る。 三谷の
渓間へ虎杖取りに行ったこともあった。薄暗い湿っぽい朽葉の匂のする茂みの奥に大きな....
「雑記(Ⅰ)」より 著者:寺田寅彦
。そこに名高い花月園というものの入口があった。どんなにか美しいはずのこんもりした
渓間に、ゴタゴタと妙な家のこけら葺の屋根が窮屈そうに押しあっているのを見下ろして....
「怪人の眼」より 著者:田中貢太郎
径の方へ往きかけた。鶴は動かなかった。 「今日はよっぽど悪い日じゃ」 径は直ぐ
渓間の方へ低まって往った。丹治は眼を渓の下の方にやろうとした。赤い靄が眼の前を飛....
「雪代山女魚」より 著者:佐藤垢石
一 奥山の仙水に、山女魚を釣るほんとうの季節がきた。 早春、崖の南側の陽だまりに、蕗の薹が立つ頃になると、
渓間の佳饌山女魚は、俄に食趣をそそるのである。その濃淡な味感を想うとき、嗜欲の情....
「越中劍岳先登記」より 著者:柴崎芳太郎
遺骸、少くも骨の一片位はなくてはならんはずだが、品物はそのまま其処に身体は何処か
渓間へでも吹飛されたものか、この秘密は恐くは誰れも解くものはあるまい、なお不審に....
「北穂天狗の思い出」より 著者:上村松園
れてもぶたれても、別にあせる模様もなくどこまでものんびりである。ここかしこの山間
渓間にはまだ残雪が深く、おくれ咲きの山桜や山吹とともに何ともいわれぬ残春の景趣を....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
に、日光ただちに赤土に反射し、人をして日射病を起こさしむるの恐れあり。市外の山麓
渓間に入れば、多少の樹陰ありて、涼をいるるに足る。ここより飲用水を運ぶに、布ぶく....
「長崎の鐘」より 著者:永井隆
夜焼け跡の防空壕から仰いだアンタレスは不吉な赤さで搏動していたが、今夜この平静な
渓間から望めば、何か親しみたい気を起こさせる。だれもが黙って歩いている。死んだ友....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
て、私達の体にも真白な砂地にも音もなく沁み込む。この大虎杖の叢は北アルプス北部の
渓間に特有の景象で、南アルプスの渓を埋むる深い森林とは、また異った快感を私達に与....