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渡し舟
「渡し舟〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
渡し舟の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「父」より 著者:太宰治
ととさまえのう、と口々に泣いて父を呼ぶ。宗吾郎は、笠《かさ》で自分の顔を覆うて、
渡し舟に乗る。降りしきる雪は、吹雪《ふぶき》のようである。 七つ八つの私は、そ....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
という芝居にあるようなことは勿論嘘でしょうが、矢口渡の船頭が足利方にたのまれて、
渡し舟の底をくり抜いて、新田《にった》義興《よしおき》の主従を川へ沈めたというの....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
聞くようになった。吉田橋|架け替えの工事も始まっていて、神奈川から横浜の方へ通う
渡し舟も見える。ある日も寛斎は用達のついでに、神奈川台の上まで歩いたが、なんとな....
「田舎教師」より 著者:田山花袋
るところを茶店の婆さんはあわてておうと、猫が桑畑の中に入ってニャアニャア鳴いた。
渡し舟は着くたびにいろいろな人を下ろしてはまたいろいろな人を載せて行った。自転車....
「三人の相馬大作」より 著者:直木三十五
》へ降りて、紙燭をたよりに、村の方へ歩いて行った。 十二 いつまでも、
渡し舟が出ないで、夕方近くになったから、人々は、そこから先の旅をあきらめて、近い....
「ヘンゼルとグレーテル」より 著者:楠山正雄
ルはいいました。「橋にも、いかだにも、まるでわたるものがないや。」 「ここには、
渡し舟も行かないんだわ。」と、グレーテルがいいました。 「でもあすこに、白いかも....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
わないのかしら。ちょうど……(ごめんなさい、怒《おこ》っちゃいやよ)……ちょうど
渡し舟でも呼ぶようだわ。」
彼は怒らなかった。心から笑っていた。そして多少当た....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
融《と》け合ってしまう。その薄ら明かりの夢の上を、一人の人影も見えない幽鬼めいた
渡し舟が、柩《ひつぎ》のようにすべり動いていた。夜の闇《やみ》は濃くなっていった....
「渡舟場」より 著者:豊島与志雄
対しても、兄さんはそうなのである。川原さんたちを見送りに町まで行く筈だったのに、
渡し舟まででやめてしまったのも、兄さんの一人ぎめによるのだった。兄さんはなんにも....
「明治開化 安吾捕物」より 著者:坂口安吾
日目、二月五日の午さがりに、用があってタケヤの渡しで向島へ渡り、さて用をすまして
渡し舟の戻ってくるのを待つ間、なんとなくドテをブラブラ歩きだすと、また岸の草の中....
「桜花を詠める句」より 著者:杉田久女
な江戸絵を見る如きなつかしさ、美しさ古めかしさを覚えるのである。 花冷や夕影の中
渡し舟 輝女 月のよの桜に蝶の朝寝かな 千代女 加賀の千代の句、下五字に擬....
「安吾の新日本地理」より 著者:坂口安吾
の堅固なもの。鉄砲という新兵器への断圧などは序の口で、大きな河には橋を造らせず、
渡し舟まで禁じるという警戒万全主義であるから、鎖国だとか切支丹宗門断圧は彼の主義....
「岩魚」より 著者:佐藤垢石
武州の、これも豪農の美しい令嬢である。仲人は、目出度い談を纏めようとして、幾度も
渡し舟に乗って石坂家を訪れた。 賢彌が、岩魚の精と共に永久に深淵に棲む運命を迎....
「流刑地で」より 著者:カフカフランツ
にも自分たちをつれていかせるつもりらしい。旅行者が階段の下で一人の船頭と汽船への
渡し舟の交渉をしているあいだに、二人はすごい勢いで階段をかけ下りてきた。無言のま....
「本所両国」より 著者:芥川竜之介
一銭蒸汽」のあるだけだった。或はその外に利根川通いの外輪船のあるだけだった。僕は
渡し舟に乗る度に「一銭蒸汽」の浪の来ることを、――このうねうねした浪のために舟の....