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湿
「湿〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
湿の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
なってしまった。どこもかしこも、炎天のほこりを浴びたこの町の辻で、わずかに一滴の
湿りを点じたものがあるとすれば、それはこの蛇《ながむし》の切れ口から出た、なまぐ....
「玄鶴山房」より 著者:芥川竜之介
いた。玄鶴は、――玄鶴も時々は目を醒《さ》ましていた。が、湯たんぽが冷えたとか、
湿布が乾いたとか云う以外に殆ど口を利いたことはなかった。こう云う「離れ」にも聞え....
「神神の微笑」より 著者:芥川竜之介
い、中空《なかぞら》の羽音《はおと》よりほかはなかった。薔薇の匂《におい》、砂の
湿り、――一切は翼のある天使たちが、「人の女子《おみなご》の美しきを見て、」妻を....
「日光小品」より 著者:芥川竜之介
ろい》をつけていた。小暗い杉の下かげには落葉をたく煙がほの白く上って、しっとりと
湿った森の大気は木精のささやきも聞えそうな言いがたいしずけさを漂せた。そのもの静....
「野呂松人形」より 著者:芥川竜之介
かない明るさが、往来に漂《ただよ》っている。木の芽を誘うには早すぎるが、空気は、
湿気を含んで、どことなく暖い。二三ヶ所で問うて、漸《ようや》く、見つけた家は、人....
「沼地」より 著者:芥川竜之介
か云うので、画家は知名の人でも何でもなかった。また画そのものも、ただ濁った水と、
湿った土と、そうしてその土に繁茂《はんも》する草木《そうもく》とを描《か》いただ....
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
げて、※々《そうそう》店の方へ退こうとした。その途端に障子が明くと、頸《くび》に
湿布《しっぷ》を巻いた姉のお絹《きぬ》が、まだセルのコオトも脱がず、果物《くだも....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
りもさらに凄じく、寂しい怒が荒れ狂っていた。
二十四
やがて足もとの岩は、
湿った苔《こけ》になった。苔はまた間もなく、深い羊歯《しだ》の茂みになった。それ....
「俊寛」より 著者:芥川竜之介
青い、腹の白い、形は鸛《こう》にそっくりの鳥じゃ。この島の土人はあの肉を食うと、
湿気《しっき》を払うとか称《とな》えている。その芋《いも》も存外味は好《よ》いぞ....
「槍が岳に登った記」より 著者:芥川竜之介
てまたもとの静けさに返ってしまう。路が偃松《はいまつ》の中へはいると、歩くたびに
湿っぽい鈍い重い音ががさりがさりとする。ふいにギャアという声がした。おやと思うと....
「夢」より 著者:芥川竜之介
していた。わたしの部屋には画架のほかに籐椅子の一脚あるだけだった。籐椅子は空気の
湿度《しつど》の加減か、時々誰も坐らないのに籐《とう》のきしむ音をさせることもあ....
「歯車」より 著者:芥川竜之介
半生を送った彼の習慣に従ったのだった)が、彼の手は不思議にも爬虫類の皮膚のように
湿っていた。 「君はここに泊っているのですか?」 「ええ、……」 「仕事をしに?....
「初雪」より 著者:秋田滋
にランプを持って来させる。それから煖炉のそばへ行く。山のように焚木を燃やしても、
湿り切った大きな部屋は、ねっから暖くならなかった。彼女は一日じゅう、客間にいても....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
なりぬ。 浅草諏訪町の河岸にて木造の外だけを飾りに煉瓦に積みしなれば、暗くして
湿りたり。この活版所に入りてここに泊り朝より夕まで業に就き、夕よりまた夜業とて活....
「寡婦」より 著者:秋田滋
てに打たれた大木のしたにいると、黴くさい匂いや、降った雨水、びッしょり濡れた草、
湿った地面からあがって来る水分がからだを包んでしまう。射手たちはこのひッきりなし....