湿す[語句情報] »
湿す
「湿す〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
湿すの前後の文節・文章を表示しています。該当する10件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「鐘に釁る」より 著者:寺田寅彦
著しいことは日常の経験からもよく知られている。真鍮などのみがいた鏡面を水で完全に
湿すのが困難であるのは、目に見えない油脂の皮膜のためである。こういう皮膜がいわゆ....
「白峰山脈縦断記」より 著者:小島烏水
ある。川は、底を傾けて、水を震うので、森の中まで、吹雨が迷い込んで、満山の樹梢を
湿す。白樺や五葉松は、制裁もなければ、保護もなく、永えに静粛に、そして厳格に、造....
「神秘昆虫館」より 著者:国枝史郎
じゃアない。桔梗様を見付けて取り返すのさ。どうせ切り合いになるだろう。刀の目釘を
湿すがいい。ええと合言葉は『船と輿』だ。そうは云っても乱闘となったら、チリヂリバ....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
さけびながら、鉄十郎は馬をおりた。
ほかの騎馬の侍もかけ着いて手早く刀の目釘を
湿す。おくれて駕籠や徒歩《かち》の連中もみな到来した。伊賀勢は、ここに思わぬ大集....
「宝島」より 著者:佐々木直次郎
足した。「お前、いい子だから、ちょっと跳び上って、己に林檎を一つ取ってくれ。咽を
湿すんだから。」 その時の私の恐怖は想像出来るであろう! その力さえあったなら....
「太陽系統の滅亡」より 著者:木村小舟
、すでに幾度も生滅を繰返したのである」 彼はかく述ぶるとともに、暫時その咽喉を
湿すべく、冷水の杯を手にしたのであったが、かかる分秒時とも、彼らの聴衆は静かに俟....
「法隆寺再建非再建論の回顧」より 著者:喜田貞吉
粗雑なる駁論の梗概である。今にしてこれを観るに、論鋒甚だ激越にして、慚汗為に肌を
湿すの感があり、論旨またすこぶる不備にして、さらに補訂を要するもの少からざるも、....
「五重塔」より 著者:幸田露伴
ぬるばかり、済みませぬという辞誼を二度ほど繰り返せし後、ようやく乾ききったる舌を
湿す間もあらせず、今ごろの帰りとはあまり可愛がられ過ぎたの、ホホ、遊ぶはよけれど....
「性に眼覚める頃」より 著者:室生犀星
くことがあった。幾抱えもある大きな栂が立っていて、どんなに雨が降ってもその根元を
湿すことがなかった。その下に迷い子の墓碑があって、子供が道に迷ったりすると、この....
「それから」より 著者:夏目漱石
って不安になって、何の意味もないのに、只この感じを駆逐する為に封筒の糊《のり》を
湿す事があった。それが半年ばかり続くうちに、代助の頭も胸も段々組織が変って来る様....