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満ちる
「満ちる〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
満ちるの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
くしてそれがしずまると、風の生み出す音の高い不思議な沈黙がまた天と地とにみなぎり
満ちる。 やや二時間もたったと思うころ、あや目も知れない闇の中から、硫黄が丘の....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
りに沙翁の跡を訪ねた。依然として三百年前の遺跡が存し、筆跡はなお香りたって故屋に
満ちる思いがした。) 十八日、晴れ。理学の泰斗ニュートンの誕生地たるコルスター....
「ルバイヤート」より 著者:小川亮作
バグダード*でも、バルク*でも、命はつきる。 酒が甘かろうと、苦かろうと、盃は
満ちる。 たのしむがいい、おれと君と立ち去ってからも、 月は無限に朔望をかけめぐ....
「碧蹄館の戦」より 著者:菊池寛
郎機砲、霹靂砲、子母砲、火箭等、城門を射撃する爆発の音は絶間もなく、焔烟は城内に
満ちる有様であった。日本軍は壁に拠って突喊して来る明軍に鳥銃をあびせる。明軍死す....
「三人の訪問者」より 著者:島崎藤村
しいものであった。 久しぶりで東京の郊外に冬籠りした。冬の日の光が屋内まで輝き
満ちるようなことは三年の旅の間なかったことだ。この季節に、底青く開けた空を望み得....
「新生」より 著者:島崎藤村
―ことしは久しぶりで東京の郊外に冬籠《ふゆごも》りする。冬の日は光が屋内まで輝き
満ちるようなことは過ぐる三年の間はなかったことだ。この季節に、底青く開けた空を望....
「書について」より 著者:高村光太郎
のような立派な書をまねて、わざと金釘流に書いてみたりもする。書道興って悪筆天下に
満ちるの観があるので自戒のため此を書きつけて置く。....
「智恵子の半生」より 著者:高村光太郎
随分困らせられた。然し彼女は私を信じ切り、私は彼女をむしろ崇拝した。悪声が四辺に
満ちるほど、私達はますます強く結ばれた。私は自分の中にある不純の分子や溷濁の残留....
「山の秋」より 著者:高村光太郎
うと吹いてくるオゾンに富んだ微風の新鮮無比な、宇宙的感覚のようなものが胸一ぱいに
満ちるのであった。(秋の味覚のリンゴのことは又別に書く。)....
「新ハムレット」より 著者:太宰治
す迄も無くデンマークの国民ひとしく、ほっと安堵の吐息をもらし、幸福な笑顔が城中に
満ちるでしょう。正義は必ずしも、人の非を挙げて責めるものではなく、ある時には、無....
「花物語」より 著者:寺田寅彦
を屋根から庭へ一面に降らせた。落ちた花は朽ち腐れて一種甘いような強い香気が小庭に
満ちる。ここらに多い大きな蠅が勢いのよい羽音を立ててこれに集まっている。力強い自....
「涼味数題」より 著者:寺田寅彦
記憶である。この、それ自身にははなはだ平凡な光景を思い出すと、いつでも涼風が胸に
満ちるような気がするのである。なぜだかわからない。こんな平凡な景色の記憶がこんな....
「秋の幻」より 著者:豊島与志雄
堅くなり、物の影が淡くなって、透き通った青みを帯びた明るみが、黄色を帯びた地上に
満ちると、蛇は穴に入り、虫は叢の中に隠れた。凡てが自分自身の棲家に籠るのである。....
「太十と其犬」より 著者:長塚節
める。忙しく泡を飛ばして其無数の口が囁く。そうして更に無数の囁が騒然として空間に
満ちる。電光が針金の如き白熱の一曲線を空際に閃かすと共に雷鳴は一大破壊の音響を齎....
「海豹島」より 著者:久生十蘭
出させる。子供たちはとっくに寝床にゆき、広すぎる書斎に私はひとりいる。虚空にみち
満ちる北風の悲歌は、よしない記憶を掻きおこし、当事の事情をありのままに記述してみ....