»
溢
「溢〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
溢の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い：新字新仮名]
「戯作三昧」より 著者:芥川竜之介
「我《が》」は「悟《さと》り」と「諦《あきら》め」とに避難するにはあまりに情熱に
溢《あふ》れている。
彼は机の前に身を横たえたまま、親船の沈むのを見る、難破し....
「邪宗門」より 著者:芥川竜之介
して、やがて苦しそうな呻《うな》り声さえ、例の泡だらけな口の中から、一しきり長く
溢れて参りました。
「やあ、阿父《おとっ》さんが、生き返った。」
童部《わらべ....
「十円札」より 著者:芥川竜之介
とういす》の上に悠々と巻煙草へ火を移した。彼の心は近頃にない満足の情《じょう》に
溢《あふ》れている。
溢れているのは偶然ではない。第一に彼は十円札を保存することに....
「袈裟と盛遠」より 著者:芥川竜之介
私は腹立たしさと寂しさとで、いくら泣くまいと思っても、止《と》め度《ど》なく涙が
溢《あふ》れて来た。けれども、それは何も、操《みさお》を破られたと云う事だけが悲....
「蜘蛛の糸」より 著者:芥川竜之介
ずい》からは、何とも云えない好《よ》い匂《におい》が、絶間《たえま》なくあたりへ
溢《あふ》れて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。
やがて御釈迦様はそ....
「おぎん」より 著者:芥川竜之介
ぎんが泣き伏した顔を挙げずにいたら、――いや、もうおぎんは顔を挙げた。しかも涙に
溢《あふ》れた眼には、不思議な光を宿しながら、じっと彼を見守っている。この眼の奥....
「女」より 著者:芥川竜之介
ふくろ》の天井を噛《か》み切った。無数の仔蜘蛛《こぐも》は続々と、そこから広間へ
溢《あふ》れて来た。と云うよりはむしろその敷物自身が、百十の微粒分子《びりゅうぶ....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
の口からは、叫ぶとも呻《うめ》くとも形容出来ない、苦しそうな声が一声《ひとこえ》
溢《あふ》れて来た。あの容貌の醜い若者は、その声が耳にはいるが早いか、急に悪夢か....
「少年」より 著者:芥川竜之介
》かに黒塗りの膳《ぜん》の上を照らしている。こう云う時の膳の上ほど、美しい色彩に
溢《あふ》れたものはない。保吉《やすきち》は未《いま》だに食物《しょくもつ》の色....
「侏儒の言葉」より 著者:芥川竜之介
みなかったのは別に不思議ではない。こう云う光景は夢みるにさえ、余りに真実の幸福に
溢《あふ》れすぎているからである。
附記 わたしの甥はレムブラントの肖像画を買....
「俊寛」より 著者:芥川竜之介
思議な気がするくらい、ありとあらゆる罵詈讒謗《ばりざんぼう》が、口を衝《つ》いて
溢《あふ》れて来た。もっともおれの使ったのは、京童《きょうわらべ》の云う悪口《あ....
「馬の脚」より 著者:芥川竜之介
生活の単調を一撃のもとにうち砕《くだ》いた。三菱《みつびし》会社員忍野半三郎は脳
溢血《のういっけつ》のために頓死《とんし》したのである。
半三郎はやはりその午....
「「菊池寛全集」の序」より 著者:芥川竜之介
も、太い線の画を描いて行った。その画は微細な効果には乏しいにしても、大きい情熱に
溢れていた事は、我々友人の間にさえ打ち消し難い事実である。（天下に作家仲間の友人....
「墓」より 著者:秋田滋
ていたのではございません。わたくしは、何ものをもってしても代えることの出来ない、
溢れるばかりの情熱をもって彼女を愛していたのであります。もの狂おしいまでに熱愛し....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
たりしなり。尋ね着きて伯父の手紙を渡せば、その人は受取りて表書の名を見るより涙を
溢して悦び、口早に女房にも告げ神仏の来臨の如く尊敬して座敷へ通し、何はさて置き伯....