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溢れ出す
「溢れ出す〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
溢れ出すの前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「河明り」より 著者:岡本かの子
の顔をなつかしそうにまともに見はじめた。だが何気ないその笑い顔の頬にしきりに涙が
溢れ出す。娘はそれをハンケチで拭い拭い男の顔に目を離さない――男もいじらしそうに....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
。つまり、二人以上の重量が法度で、それが加わると、松毬の頂飾が開いて、この粉末が
溢れ出すのだよ。それも、以前マリア・アンナ朝時代では、媚薬などを入れたものだが、....
「播州平野」より 著者:宮本百合子
ようにと心をくばりながらつたえたとき、重吉の体は、あんなに大きくなって面会窓から
溢れ出すように見えた。ひろ子の目にだけ、そう見えたのだと決して思えなかった。そこ....
「我に叛く」より 著者:宮本百合子
さを久しく取上げられている寿賀子は、気の毒なほど悦んだ。彼女は、思わずゆき子が、
溢れ出す愛を感じたほど、暖い心と眼で、迎えてくれたのである。 ゆき子は、万事が....
「地は饒なり」より 著者:宮本百合子
あくび》をするように、必要であり、適当である場合には、知らず識らず、自分の中から
溢れ出すものとなりさえすればよいのである。 人類の愛、神の愛。それは自分が、自....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
。こうなるとまさしく神尾の怖るべき酒乱が兆《きざ》して来たもので、その兇暴な力が
溢れ出すと、お吉も禁制を破らせては済まないという奉公心も手伝って、なお一生懸命に....
「日本プロレタリア文化連盟『働く婦人』を守れ!」より 著者:宮本百合子
帝国主義戦争絶対反対! 同一労働に対しては同一賃金をよこせ! と叫んで工場から
溢れ出す。特別今年のメーデーは戦争のために起った物価騰貴、労働条件の悪化、いくら....
「よろこびはその道から」より 著者:宮本百合子
らつく俥夫の白シャツは わたしの うれしい前じらせ 車がとまり その幌のなかから
溢れ出す わたしのよろこび この小径は よろこびの小径。 きょうも空しく暮れるよ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
も脇差を抜いて、仰向けに倒れながら、それを構えたが、みるみる、面《かお》の全部が
溢れ出す血潮で塗りつぶされ、余れるものは指の間から筋を引いて下へ落ちます。 竜....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
きです。ここの手を切られると、水は忽ち日下部《くさかべ》や塩山《えんざん》一帯に
溢れ出す。ここの手だけは死力を尽しても防がなければならない。すでに日頃から堅固な....
「泡盛物語」より 著者:佐藤垢石
て、道路に沿った掘割に注いでいるのであるが途中になに物か滞って不通となって湯水が
溢れ出すというのである。そこでわれらは、まず長い割り竹で土管の尻から突いてみた。....
「美音会」より 著者:佐藤垢石
楽手が皆芸人らしくない所が気持ちが良い。葭本幾野という歌手の声は、まるで場内から
溢れ出すように透った良い喉なので聴衆は皆感嘆する。『佳い声だね、佳い声だね』とあ....
「上海」より 著者:横光利一
の中に包んだ肉体を清めながら、ぽたぽた白い花のように滴った。やがて、蒸気が浴室に
溢れ出すと、一面長方形の真白な靄の中に、主人も客も茫々として見えなくなった。蒸気....