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漂
「漂〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
漂の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「英雄の器」より 著者:芥川竜之介
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「そうかね。」
鼻の高い、眼光の鋭い顔が一つ、これはやや皮肉な微笑を唇頭に
漂わせながら、じっと呂馬通《りょばつう》の眉の間を見ながら、こう云った。呂馬通は....
「疑惑」より 著者:芥川竜之介
うとうとと浅い眠に沈みながら、それでもまだ腹の底には水のような春寒《はるさむ》が
漂っているのを意識した。
するとある夜の事――それは予定の講演日数が将《まさ》....
「影」より 著者:芥川竜之介
まだ花盛りの夾竹桃《きょうちくとう》は、この涼しそうな部屋の空気に、快い明るさを
漂《ただよ》わしていた。
壁際《かべぎわ》の籐椅子《とういす》に倚《よ》った房....
「開化の良人」より 著者:芥川竜之介
年時代の美貌《びぼう》が、まだ暮方《くれがた》の光の如く肉の落ちた顔のどこかに、
漂《ただよ》っている種類の人であった。が、同時にまたその顔には、貴族階級には珍ら....
「神神の微笑」より 著者:芥川竜之介
薇の花は、木々を幽《かす》かにする夕明《ゆうあか》りの中に、薄甘い匂《におい》を
漂わせていた。それはこの庭の静寂に、何か日本《にほん》とは思われない、不可思議な....
「河童」より 著者:芥川竜之介
伸ばしています。なにか沙漠《さばく》の空に見える蜃気楼《しんきろう》の無気味さを
漂わせたまま。……
一五
それからかれこれ一週間の後、僕はふと医者のチャッ....
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
、じっとその響に聞き入っていた。こうしている内に彼女の眼には、いつか涙が一ぱいに
漂って来る事があった。しかしふだんは重苦しい眠が、――それ自身悪夢のような眠が、....
「黒衣聖母」より 著者:芥川竜之介
めていた。が、眺めている内に、何か怪しい表情が、象牙《ぞうげ》の顔のどこだかに、
漂《ただよ》っているような心もちがした。いや、怪しいと云ったのでは物足りない。私....
「或日の大石内蔵助」より 著者:芥川竜之介
静《しずか》である。時たま、しわぶきの声をさせるものがあっても、それは、かすかに
漂《ただよ》っている墨の匂《におい》を動かすほどの音さえ立てない。
内蔵助《く....
「大川の水」より 著者:芥川竜之介
《ふなばた》に倚《よ》って、音もなく流れる、黒い川をみつめながら、夜と水との中に
漂う「死」の呼吸を感じた時、いかに自分は、たよりのないさびしさに迫られたことであ....
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
なぞした。
しかし彼の※《まぶた》の裏には、やはりさまざまな母の記憶が、乱雑に
漂って来勝ちだった。その中には嬉しい記憶もあれば、むしろ忌《いま》わしい記憶もあ....
「馬の脚」より 著者:芥川竜之介
。今は入り日さえ窓の外に全然光と言う感じのしない、濁《にご》った朱《しゅ》の色を
漂《ただよ》わせている。半三郎の脚はその間も勿論静かにしている訣《わけ》ではない....
「アグニの神」より 著者:芥川竜之介
ってしまいました。と同時に不思議な香の匂が、町の敷石にも滲みる程、どこからか静に
漂って来ました。 四 その時あの印度人の婆さんは、ランプを消した二階....
「墓」より 著者:秋田滋
ッとあがって来て、わたくしの顔を撫でました。ああ、彼女の床には菖蒲の香りが馥郁と
漂っていたのでありますが――。しかし、わたくしは棺を開けました。そして、火をとも....
「寡婦」より 著者:秋田滋
立っておりました。林の隙間を月が塞ごうとするかのように、綿のような靄がいちめんに
漂っておりました。すると、その子は出し抜けに立ちどまって、私の手をにぎり緊めて、....