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漸く
「漸く〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
漸くの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「忠義」より 著者:芥川竜之介
《たす》けたりしている若党|草履《ぞうり》取を加えても、一行の人数《にんず》は、
漸く十人にすぎない。それが、とり乱した気色もなく、つれ立って、門を出た。
延享....
「杜子春」より 著者:芥川竜之介
白蛇と同じように、鉄冠子の留守をつけこんだ、魔性の悪戯に違いありません。杜子春は
漸く安心して、額の冷汗を拭いながら、又岩の上に坐り直しました。 が、そのため息....
「蜜柑」より 著者:芥川竜之介
―そう云うすべては、窓へ吹きつける煤煙の中に、未練がましく後へ倒れて行った。私は
漸くほっとした心もちになって、巻煙草に火をつけながら、始めて懶い睚をあげて、前の....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
他の人格がその口頭機関を占領して自由自在に言語を発するようになりました。『これで
漸くトーキーができ上がった……』私達はそんな事を言って歓んだものであります。『小....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
、諄々として教え導くにつとめた。当時一般世人から軽蔑されたスピリチュアリズムが、
漸く堅実なる地歩を、天下に占むるに至ったことにつきてはモーゼスの功労が、どれ丈け....
「夜釣の怪」より 著者:池田輝方
後へやって来たそうです。それで、「もう早く帰ろう。」というんだそうです。 「今|
漸く釣れて来たものを、これから? 帰るのは惜しいじゃないか。」と言ったが、何でも....
「大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
ては縦ち、引いては縦ち、幾ら痿やそうとしても、痿えないでしよう。やや暫くかかって
漸く抄い上げて見ると、大きな塩鮭程なのでしょう。私が急いで雑巾を取るか取らないに....
「瘠我慢の説」より 著者:石河幹明
との間に、交通を開き事を謀りたる者にて、流石は外交家の手腕を見るべし。かくて事の
漸く進むや外国奉行等は近海巡視など称し幕府の小軍艦に乗じて頻々公使の許に往復し、....
「色盲検査表の話」より 著者:石原忍
に見てもらい、かようにして研究をつづけて行ったのであります。そうして数カ月の後に
漸く一通りの原稿ができ上ったのですが、さてそれを印刷するのにどういう大きさにすれ....
「戦争史大観」より 著者:石原莞爾
ンに対する墺国女王マリア・テレジヤの反抗は執拗を極め、大王は前後三回の戦争に依り
漸くその領有を確実ならしめたのである。大王終世の事業はシュレージエン問題の解決に....
「茶の湯の手帳」より 著者:伊藤左千夫
実行そっちのけの研究者は更にお気がつかぬらしい。 彼の徳川時代の初期に於て、戦乱
漸く跡を絶ち、武人一斉に太平に酔えるの時に当り、彼等が割合に内部の腐敗を伝えなか....
「浜菊」より 著者:伊藤左千夫
だ》しい、予も此年をしてこんな経験は初めてであるから、まごつかざるを得ない訳だ。
漸く細君が朝飯を運んでくれたが、お鉢という物の上に、平べったいしおぜのお膳、其に....
「六日月」より 著者:岩本素白
れながら余りの愚しき勇猛が悔いられて、その夜は心静かに高台寺の下を歩く。 秋も
漸く深い夜を、東山の影は黒々と眠って居たが、恵比須講の灯に明るい四条通り、殊に新....
「淡島椿岳」より 著者:内田魯庵
身代を見込んで笑名に札が落ちた。商売運の目出たい笑名は女運にも果報があって、老の
漸く来らんとするころとうとう一の富を突き当てて妙齢の美人を妻とした。 尤も笑名....
「三十年前の島田沼南」より 著者:内田魯庵
も二、三度しかなかった。シカモその二、三度も、待たされるのがイツモ三十分以上で、
漸く対座して十分かソコラで用談を済ますと直ぐ定って、「ドウゾ復たお閑の時御ユック....