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潮騒
「潮騒〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
潮騒の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
た前方からかすかに光がもれて来た。頭の上ではざあざあと降りしきる雨の中に、荒海の
潮騒《しおざい》のような物すごい響きが何か変事でもわいて起こりそうに聞こえていた....
「星座」より 著者:有島武郎
る雪の坂道を、つまさきに力を入れながらおせいはせっせと登っていった。港の方からは
潮騒のような鈍い音が流れてきた。その間に汽船の警笛が、耳の底に沁《し》みこむよう....
「街頭の偽映鏡」より 著者:佐左木俊郎
いつは、二人組みの詐欺だろう」 群衆の中からそんな声が起こった。そして、群衆は
潮騒《しおさい》のように崩れだした。 「吉本! 本当にしっかりしてくれ」 茶色....
「仮装観桜会」より 著者:佐左木俊郎
花はどこまでもおっとりと誇らかに咲いているのであった。 花見の人たちはその下を
潮騒《しおさい》のように練っていた。幾つも幾つも団体の仮装が通った。喚声が高らか....
「恐怖城」より 著者:佐左木俊郎
ゃんはそう思っているのか?」 敬二郎は驚きの目を瞠《みは》って言った。彼の胸は
潮騒《しおざい》のように忙《せわ》しく乱れていた。彼は紀久子の顔から、いつまでも....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
わぎらぎらと光っていた。星は語らない。ただはるかな山すそから、干潮になった無月の
潮騒が、海妖の単調な誘惑の歌のように、なまめかしくなでるように聞こえて来るばかり....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
…」 そのカークの言葉を身に滲むように聴きながら、座間はくらい海の滅入るような
潮騒とともに、ひそかに咽びはじめていたのだ。 * その一夜は寝床....
「青草」より 著者:十一谷義三郎
を見た。空の星が自分の汗の中へ溶けこんでくるほどの快さであった。彼は舟の下を走る
潮騒に耳をすました。音は自分の胸から湧きでるほど自然に聞えた。彼は力の張りきった....
「万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
女官中に人麿の恋人もいたためだろうと想像する向もある。 ○
潮騒に伊良虞の島辺榜ぐ船に妹乗るらむか荒き島回を 〔巻一・四二〕 柿本人麿 前....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
屋《ちゅうげんべや》に馬鹿ばなしがはずんでいるらしく、どっと起こる笑い声が遠くの
潮騒《しおさい》のように含んで聞こえる。
秋の夜の静寂は、何やら物語を訴うるが....
「犬を連れた奥さん」より 著者:神西清
、町はその糸杉の木立ともどもひっそり死に果てたような様子だった。が海は相かわらず
潮騒の音を立てて、岸辺に打ち寄せていた。艀舟が一艘、波間に揺れていて、その上でさ....
「決闘」より 著者:神西清
も、眸にも、声の調子にも、歩み振りにも、彼女は自らの慾望の息吹きをしか感じない。
潮騒も恋せよとささやく、宵闇も恋せよとささやく、山々もまた恋せよとささやく。……....
「歴史の流れの中の図書館」より 著者:中井正一
中に巻き込んでいるところの大いなる流れ、個人より集団へと移りつつある世界の流れの
潮騒のしるしが、ここに今、寂かに訪れているのである。 この寂けさを、われわれは....
「リラの手紙」より 著者:豊田三郎
って金を借りて別れていった三ツ木の言葉を思い出していた。それは青春の心臓の妖しい
潮騒だった。久能はもう久しい事その響をきいていたが、堰を破る程にも狂い出さず、い....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
があった。ああ、あの頃だったなと思うと、私の追憶には青い青い広重の海の色や朝夕の
潮騒の音が響いて来る。何かにつけて涙ぐましい自分であったなと思う。 あかしやの花....