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「濃やか〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

濃やかの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
も柱とも取り縋っているのを徳三郎は惨らしくも思った。こうして二人の愛情はいよいよ濃やかになったが、なにぶんにも小間物の担ぎ商いをしている現在の男の痩腕では、江戸....
婦系図」より 著者:泉鏡花
た幾千の輝く鞠となって、八方に投げ交わさるるかと思われる。 ここに一際夜の雲の濃やかに緑の色を重ねたのは、隅田へ潮がさすのであろう、水の影か、星が閃く。 我....
鶴は病みき」より 著者:岡本かの子
える。長谷の海岸に着いた。一しきり人出の減った海は何処か空の一隅の薄曇りの影さえ濃やかな波の一つ一つの陰に畳んでしっとりと穏かだった。だが、私は何かその静穏な海....
愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
纏綿として離れがたく、純乎として清きよ。夜半夢破れて枕に通う春雨の音に東都の春の濃やかなるを忍ぶとき、御身恋しの心は滲むがごとくに湧き出ずるなり。今宵月白し。花....
連環記」より 著者:幸田露伴
を以て詩を賦せしめられた。天皇も文雅の道にいたく御心を寄せられたこととて、 露は濃やかにして 緩く語る 園花の底、 月は落ちて 高く歌ふ 御柳の陰。 という句を....
露肆」より 著者:泉鏡花
ヤと動き出して、牛鍋の唐紅も、飜然と揺ぎ、おでん屋の屋台もかッと気競が出て、白気濃やかに狼煙を揚げる。翼の鈍い、大きな蝙蝠のように地摺に飛んで所を定めぬ、煎豆屋....
甲州鎮撫隊」より 著者:国枝史郎
直に云い、又、周章てて取消そうとしたが、自棄のように大胆になり、 「初心で、情が濃やかで……」 「神様のようで……」 「うん。……いや……それ程でもないが……親....
愛の問題(夫婦愛)」より 著者:倉田百三
婦愛を傷つける場合は少なくないし、またあまりそういう働きのあるような婦人は、愛が濃やかでなく、すべて受身でなく可愛らしげがないという意味あいもあるのだ。 婦人....
白光」より 著者:井上紅梅
。今度はいっそう広大に硫黄の火よりもハッキリとして白く、朝霧よりもほんのりとして濃やかに、東の壁の書卓の下から立上った。 陳士成は獅子のように馳け出して、門の....
夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
かれはつくづくそう思って困惑した。素直に情感が流れて来ないということは、そういう濃やかな雰囲気を醸し出す境遇にかれが置かれていないという事、その事をかれは次第に....
光り合ういのち」より 著者:倉田百三
経験が足りないためであった。 今日なら、人間がそうした、ロマンチックな、感情の濃やかな仕打ちをするものがあることを宝石の如くに、レヤーに思うであろう。そして人....
おせん」より 著者:邦枝完二
浮き出た十八|娘。ぽつんと一|本咲き初めた、桔梗の花のそれにも増して、露は紅より濃やかであった。 明和戌年秋八|月、そよ吹きわたるゆうべの風に、静かに揺れる尾....
三十年前の島田沼南」より 著者:内田魯庵
う逸事が載っているが、沼南は心中の仕損いまでした遊蕩児であった。が、それほど情が濃やかだったので、同じ遊蕩児でも東家西家と花を摘んで転々する浮薄漢ではなかったよ....
知々夫紀行」より 著者:幸田露伴
を増しつ、身を起してそこに行き見るに、塚は小高き丘をなして、丘の上には翠の葉かげ濃やかに竹美しく生い立ちたり。塚のやや円形に空虚にして畳二ひら三ひらを敷くべく、....
黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
斜面には、目も醒るばかりに鮮かな深山毛莨の群落に交って、大桜草のくれないが口紅|濃やかな御達等の面影を偲ばせている。其中に転がって見たいようだ。此日頃|厳つい偃....