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濡らし
「濡らし〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
濡らしの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「路上」より 著者:芥川竜之介
の古色蒼然たる玄関が、霧のごとく降る雨の中に、漆喰《しっくい》の剥《は》げた壁を
濡らしていた。そうしてその玄関の石段の上には、思いもよらない若い女がたった一人|....
「海のほとり」より 著者:芥川竜之介
いか?」
「どうしてもはいらない。」
「イゴイストめ!」
Mは体を濡《ぬ》らし
濡らし、ずんずん沖《おき》へ進みはじめた。僕はMには頓着《とんじゃく》せず、着も....
「星座」より 著者:有島武郎
たとおりだった。
ラムプに黄色く灯がついてから、弟の純次は腰から下をぐっしょり
濡らして、魚臭くなって孵化場から帰ってきた。彼は店の方に行って駄菓子を取ってきて....
「国貞えがく」より 著者:泉鏡花
に、思案に余って、店端《みせさき》に腰を掛けて、時雨《しぐれ》に白髪《しらが》を
濡らしていると、其処《そこ》の亭主が、それでは婆さんこうしなよ。此処《ここ》にそ....
「野菊の墓」より 著者:伊藤左千夫
って、蓆を入れずに野へ出た処、間がわるくその日雨が降ったから、その蓆十枚ばかりを
濡らしてしまった。民子は雨が降ってから気がついたけれど、もう間に合わない。うちへ....
「二、三羽――十二、三羽」より 著者:泉鏡花
ーツィーと梢を低く坂下りに樹を伝って慕い寄る声を聞いて、ほろりとして、一人は袖を
濡らして帰った。が、――その目白鳥の事で。……(寒い風だよ、ちょぼ一風は、しわり....
「三つのなぜ」より 著者:芥川竜之介
を論じながら、人通りの多い街を歩いて行った。すると痩せ細った子供が一人、顔中涙に
濡らしたまま貧しい母親の手をひっぱっていた。 「あの林檎を買っておくれよう!」 ....
「深夜の市長」より 著者:海野十三
兄さんはきっといい人ですよ」と僕はソッと言葉を※んだ。 「兄ですって?」女は涙に
濡らした凄艶な顔を起して叫んだ。 「兄がどうしてあたくしを迎えてくれるものですか....
「電気風呂の怪死事件」より 著者:海野十三
事と知って駆けつけて来た近所の人々や、通行人らしい見知らぬ顔の男達が、或は足袋を
濡らしたまま、或は裾をまくったままで、わいわいと湯槽を取囲んでいた。 「おい、早....
「棺桶の花嫁」より 著者:海野十三
は――」 と叫んだ。釦か鋲の頭かと思ったその小さな丸いものは、ヌルリと彼の指を
濡らしたばかりだった。 彼はハッとして指頭を改めた。 「おお、血だ、――血が落....
「売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
や蒼白になった。 ここから認られたに相違ない。 と思う平四郎は、涎と一所に、
濡らした膝を、手巾で横撫でしつつ、 「ふ、ふ、ふ、ふ、ふ。」……大歎息とともに尻....
「湯島の境内」より 著者:泉鏡花
。) ※一日逢わねば、千日の思いにわたしゃ煩うて、針や薬のしるしさえ、泣の涙に紙
濡らし、枕を結ぶ夢さめて、いとど思いのますかがみ。 この間に、早瀬、ベンチを立つ....
「革鞄の怪」より 著者:泉鏡花
れはこの夏です。可愛い児でした。」 と云う時、せぐりくる胸や支え兼ねけん、睫を
濡らした。 「妻の記念だったのです。二人の白骨もともに、革鞄の中にあります。墓も....
「春昼後刻」より 著者:泉鏡花
ある。 勝では可い! ト草鞋を脱いで、跣足になって横歩行をしはじめた。あしを
濡らして遊んでいる。 大きい方は仰向けに母衣を敷いて、膝を小さな山形に寝た。 ....
「大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
外強きに呆れ、多少危懼せざるに非ざれども、手繰るに従いて、徐々相近づくにぞ、手を
濡らしつつ、風強き日の、十枚紙|鳶など手繰る如く、漸く引き寄す。 思の外、容易....