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無一物
「無一物〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
無一物の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「星座」より 著者:有島武郎
って、灯影の漏るるところたまたま我が小屋あるのみ。彼行くに所なくして、あえてこの
無一物裡に一物を庶幾《しょき》し来れるにあらざらんや。庭辺一片の食なし。かりに彼....
「幽霊塔」より 著者:黒岩涙香
回 後に三本
煖炉の燃えて居る間に余は次の室に行き戸棚の中を検査したが、殆ど
無一物の有様では有るけれど棚の隅に二三の薬壜が埃に埋まった儘である。若し余の想像....
「クララの出家」より 著者:有島武郎
識の中にありながら、凡てのものが夢のように見る見る彼女から離れて行くのを感じた。
無一物な清浄な世界にクララの魂だけが唯一つ感激に震えて燃えていた。死を宣告される....
「金属人間」より 著者:海野十三
家は大水《おおみず》のために家屋《かおく》を家財《かざい》ごと流され、ほとんど、
無一物《むいちぶつ》にひとしいあわれな状態になっていた。しかしかれの両親とひとり....
「小公女」より 著者:菊池寛
躍イギリスの貴族の子になるのにひきかえて、この『小公女』は、金持の少女が、ふいに
無一物の孤児になることを書いています。しかし、強い正しい心を持っている少年少女は....
「青鬼の褌を洗う女」より 著者:坂口安吾
いだしてきたという男はその時は慾がなかったけれどもこうして避難所へ落着いてみると
無一物が心細くて、かきわけた屍体に時計をつけた腕があったが、せめてあの時計を頂戴....
「人生案内」より 著者:坂口安吾
内狂、ついにチョビヒゲを生やすという存在はいかにも奇怪だ。 二人の子供を抱え、
無一物の中であせらず慌てず人生案内に没頭しているバカらしさ薄汚さ、どうにも次第に....
「生活と一枚の宗教」より 著者:倉田百三
そうして最後に、これは自分のものだというものが何もなくなる。何もなくなったときに
無一物という境地が出てきたのであります。それがつまり禅宗のほうで申しますと奪って....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
味を持ち始めたのを知って、人生に対する新しい対象物を考えた。彼は鏡にうつっている
無一物のこの一室を、どの婦人が見ても軽蔑しないように作り変えようと思った。そうす....
「私の活動写真傍観史」より 著者:伊丹万作
おでん屋を処分したが、あとにまだ借金が残つた。 かくて私はついにマイナスつきの
無一物になつた。そして夏から秋まで、友だちの厄介になつたりしながらぶらぶらしてい....
「安吾人生案内」より 著者:坂口安吾
があることによって起ったような一面もあるかも知れませんが、投書の場合はアベコベに
無一物であることから事が発しておって
無一物であるために、論理的にも物質的にも両者....
「狂女と犬」より 著者:小酒井不木
も変らず忠実に主人につかえて居りました。 然し、その頃には、お蝶さんは文字通り
無一物になってしまって、その日の食うものにも困るようになりました。白は殊勝にも、....
「青春の息の痕」より 著者:倉田百三
れればどこにでも行き、喜捨されたものは何でも感謝して受け取り、あたかもキリストが
無一物であって、税吏の家にでも、パリサイ人の家にでも、招かれて行かれたように、与....
「城」より 著者:カフカフランツ
旅、ここで採用されるために思い描いたさまざまなちゃんとした理由のある希望、完全な
無一物、今また家へ帰って別な適当な仕事を見つけ出すことの不可能なこと、そして最後....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
して、高浪一層はなはだしく、船縦動を継続す。ただし、幸いに天遠く晴れわたり、茫々
無一物の南溟に、波頭白をひるがえすを見るもまた壮観なり。乗客みな指を屈して、終船....