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無性に
「無性に〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
無性にの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
へやっと梶棒を下した時には、嬉しいのか、悲しいのか、自分にも判然しないほど、ただ
無性に胸が迫って、けげんな顔をしている車夫の手へ、方外《ほうがい》な賃銭を渡す間....
「或る女」より 著者:有島武郎
低く力をこめていいながら、葉子を自分の胸から引き離そうとするけれども、葉子はただ
無性にかぶりを振るばかりで、駄々児《だだっこ》のように、倉地の胸にしがみついた。....
「星座」より 著者:有島武郎
われるほど常住坐《じょうじゅうすわ》りっきりなその座になおると、顔じゅうをやたら
無性に両手で擦り廻わして、「いやどうも」といった。それは父が何か軽い気分になった....
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
「いいえいいえ、私にはできません。それはどうあってもできないことです」と滝人が、
無性にいきばって首を振っているうちに、あの焔に勢いを添えようとするものが、いよい....
「親子」より 著者:有島武郎
すのかもしれないんですが、とにかく嘘をしなければ生きて行けないような世の中が無我
無性にいやなんです。ちょっと待ってください。も少し言わせてください。……嘘をする....
「深夜の市長」より 著者:海野十三
ていたろうと思う。もう深夜の散歩者も、なんにもなかった。家に残してきた温い寝床が
無性に恋しかった。ただどうかして警官隊の網からうまく脱出したいという本能的な考え....
「西湖の屍人」より 著者:海野十三
なって仕方がなかった。 すると、背後から大声でもって、警告してやりたい程、矢鱈
無性に不安に襲われた。この嘔気のようにつきあげてくる不安は、あながち酩酊のせいば....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
の墓場」だ。 類人猿が、じぶんを埋葬にくる悲愁の終焉地だと思うと、私はその壁を
無性にかき崩した。すると、その響きにつれてどっと雪崩れる。ああマヌエラ、塩を雪の....
「棺桶の花嫁」より 著者:海野十三
あったと思うところには、赤ちゃけた焼灰ばかりがあって、まだ冷めきらぬほとぼりが、
無性に彼の心をかき乱した。 そのなかに、もしやミチミの骨が――と思って、焼けた....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
来たんです――夫は、私がこうするのを、お稲さんの霊魂が乗りうつったんだと云って、
無性に喜んでいるんです。 殺した妹の墓の土もまだ乾かないのに、私と一所に、墓参....
「余裕のことなど」より 著者:伊丹万作
て来た。 今まではただねたましいだけであつたが、佐々木の顔を見たとたんに源太は
無性に腹が立つてきた。あれほど懇望したのに御大将は自分にはくれなかつた。そして、....
「紅毛傾城」より 著者:小栗虫太郎
フローラは、美の泉を見いだしたような気がした。 彼女は、ハッハと上気して、腰を
無性にもじもじ回しはじめた。 それから、床着の黄八丈を着て、藤紫の上衣を重ね、....
「葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
一膳遣附けるぜ。鍋の底はじりじりいう、昨夜から気を揉んで酒の虫は揉殺したが、矢鱈
無性に腹が空いた。」と立ったり、居たり、歩行いたり、果は胡坐かいて能代の膳の低い....
「迷信解」より 著者:井上円了
、『心経』を読み、大勢集まりて一心に祈りければ、山々の天狗名乗りつつ退く。長老は
無性になりぬ。そのとき、近所の者どもは寺の客殿の上に火の手上がりたるを見、火事あ....
「想い出」より 著者:上村松園
松年先生が同情して下さいました。しかし、先輩もなく参考画も思うようにないだけに、
無性に人物画が描きたくて堪らなく、その時分諸家の入札とか、或はまた祇園の屏風祭り....