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然しも
「然しも〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
然しもの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
は必ずかかる物質的な材料に対して反逆を企てるだろう。 かかる建築物の如きものが
然しもっと見えのいい形で私達の生活をきびしく取り囲んでいることはないだろうか。一....
「支倉事件」より 著者:甲賀三郎
と云うだけではなく、進んで支倉の恐ろしい犯罪を立証する事が出来るかも知れぬ。が、
然しもし鑑定の結果が予期に反したとすると、第一に数日間全精力を傾倒して、必死の思....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
クソ、ドシドシ使い込んでやれ、踏倒して逃げてやれ、と悪度胸を据えた時もあります。
然しもう潔く観念しました。返えします。奇麗に返えします。成る事なら利子をつけて返....
「蠱惑」より 著者:豊島与志雄
る。 私の心の耳はたえず何かに傾けられている。卑怯者と私は自分に云ってやった。
然しもうそれに気付いた時は彼の世界が近くに迫っていた。 彼は扉をあけてつと入っ....
「過渡人」より 著者:豊島与志雄
変ごゆっくりでございましたね。」 「ああ。ちと手間取った仕事があったものだから。
然しもうすっかり済んでしまったよ。」 「それはお宜しゅうございましたね。……実は....
「愚かな一日」より 著者:豊島与志雄
と、彼は何とも云えない淋しい気になった。隣室の会話はなお途切れ勝ちに続いていた。
然しもうそれに耳を傾けるのも億劫になってきた。じっと眠ったふりをしているのが堪え....
「或る素描」より 著者:豊島与志雄
たれて夢想しながら、遅くまで教員室に残ってることがあったのは、確かな事実らしい。
然しも一人の女給仕の証言によれば、彼は決して彼女の帰りをつけるようなことはしなか....
「黒点」より 著者:豊島与志雄
って喜んだり心配したりした。寺田さんに逢うのはその場合私の最も嬉しいことだった。
然しもしやって来たら警官に捕《つかま》りはすまいかと心配した。 寺田さんはやっ....
「霧の中」より 著者:豊島与志雄
のしるしだった。 へんにこんがらかったその事件は、家の中を冷たくしてしまった。
然しも一つ南さん自身を冷たくさしたような事件があった。当時、南さんの知人や主とし....
「怪異に嫌わる」より 著者:豊島与志雄
具象的な且つ最も飛躍的なものである。君はそういうものを知りたいと願うであろうか。
然しもう、それは求めても得られないであろう。自分の精神力で創造し給え。 怪異....
「白痴」より 著者:坂口安吾
ない。それはもう一つの超自然の運命、いわば天命のようにしか思われなかった。彼には
然しもっと卑小な問題があった。それは驚くほど卑小な問題で、しかも眼の先に差迫り、....
「自由人」より 著者:豊島与志雄
俺はそこに周文圭とそれから松本千重子の面影を描き出して、涙ぐんだ。不覚の至りだ。
然しもう、夕陽に照らされた桜島を眺めていても、涙ぐみはしなかった。ただ美しいと観....
「バットクラス」より 著者:岡本かの子
居る。だが結局その知識や教習がやがてそれ等自身を逆に批判し返す程の発達を遂げた。
然しもともと受けた薫育の中枢はやはり伝統的教習であるから、いくら時代に刺戟されて....
「不在地主」より 著者:小林多喜二
なければならない。――五年も六年もかかって、ようやくそれが畑か田になった頃には、
然しもう首ッたけの借金が百姓をギリギリにしばりつけていた。 何千町歩もの払下げ....
「黒部川を遡る 」より 著者:木暮理太郎
ような頼母しい声のかかるのを空しく、実に空しく待っていたのであるから。 それは
然しもうどうでもよかった。一行の糧食は辛うじて三日を支え得るに過ぎない。これから....