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煤
「煤〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
煤の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
んで、午後の日にかっと、照りつけられている。その根元にはまた、何匹かのとかげが、
煤《すす》のように黒いからだを、気味悪くへばりつかせていたが、太郎の足音に驚いた....
「疑惑」より 著者:芥川竜之介
と据えてあった。そうしてその上には怪しげな楊柳観音《ようりゅうかんのん》の軸が、
煤《すす》けた錦襴《きんらん》の表装《ひょうそう》の中に朦朧《もうろう》と墨色《....
「ひょっとこ」より 著者:芥川竜之介
いる。札幌ビールの煉瓦壁《れんがかべ》のつきる所から、土手の上をずっと向うまで、
煤《すす》けた、うす白いものが、重そうにつづいているのは、丁度、今が盛りの桜であ....
「おぎん」より 著者:芥川竜之介
いろり》に「お伽《とぎ》の焚《た》き物《もの》」の火が燃えさかっている。それから
煤《すす》びた壁の上にも、今夜だけは十字架《くるす》が祭ってある。最後に後ろの牛....
「お時儀」より 著者:芥川竜之介
都会に住んでいる悲しさには悪臭と呼ばれる匂《におい》ばかりである。たとえば汽車の
煤煙の匂は何人《なんびと》も嗅《か》ぎたいと思うはずはない。けれどもあるお嬢さん....
「老年」より 著者:芥川竜之介
く投げ入れてあった。軸は太祇《たいぎ》の筆であろう。黄色い芭蕉布《ばしょうふ》で
煤《すす》けた紙の上下《うえした》をたち切った中に、細い字で「赤き実とみてよる鳥....
「道祖問答」より 著者:芥川竜之介
》の先が青くなって、光がだんだん薄れて来る。と思うと、丁字《ちょうじ》のまわりが
煤《すす》のたまったように黒み出して、追々に火の形が糸ほどに細ってしまう。阿闍梨....
「白」より 著者:芥川竜之介
申してから、あらゆる危険と戦って来ました。それは一つには何かの拍子《ひょうし》に
煤《すす》よりも黒い体を見ると、臆病を恥《は》じる気が起ったからです。けれどもし....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
ち上って、明るい油火の燈台を一つ一つ消して行った。後には炉《ろ》に消えかかった、
煤臭《すすくさ》い榾《ほた》の火だけが残った。そのかすかな火の光は、十六人の女に....
「たね子の憂鬱」より 著者:芥川竜之介
せいどくほん》を二冊出した。それ等の本はいつの間《ま》にか手ずれの痕《あと》さえ
煤《すす》けていた。のみならずまた争われない過去の匂《におい》を放っていた。たね....
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
くと、左官屋と荒物屋との間に挟《はさ》まって、竹格子《たけごうし》の窓のついた、
煤だらけの格子戸造りが一軒ある――それがあの神下しの婆の家だと聞いた時には、まる....
「或る女」より 著者:有島武郎
太陽の光が、紅葉坂《もみじざか》の桜並み木を黄色く見せるほどに暑く照らしていた。
煤煙《ばいえん》でまっ黒にすすけた煉瓦《れんが》壁の陰に汽車が停《と》まると、中....
「或る女」より 著者:有島武郎
。そこは運河の水のにおいが泥《どろ》臭く通《かよ》って来るような所だった。愛子は
煤《すす》けた障子《しょうじ》の陰で手回りの荷物を取り出して案配《あんばい》した....
「歯車」より 著者:芥川竜之介
ペンを休める度にぼんやりとこの雪を眺めたりした。雪は莟を持った沈丁花の下に都会の
煤煙によごれていた。それは何か僕の心に傷ましさを与える眺めだった。僕は巻煙草をふ....
「蜜柑」より 著者:芥川竜之介
それから車内の誰かに祝儀の礼を云っている赤帽――そう云うすべては、窓へ吹きつける
煤煙の中に、未練がましく後へ倒れて行った。私は漸くほっとした心もちになって、巻煙....