熟視[語句情報] » 熟視

「熟視〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

熟視の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
ょうし》に顔を合わせた時でも、その臆面《おくめん》のない、人を人とも思わぬような熟視は、かえって葉子の視線をたじろがした。人間をながめあきたような気倦《けだ》る....
或る女」より 著者:有島武郎
行く時でも、その近所で人妻らしい人の往来するのを見かけると葉子の目は知らず知らず熟視のためにかがやいた。一度も顔を合わせないが、わずかな時間の写真の記憶から、き....
星座」より 著者:有島武郎
とそうな顔の奥に積み重なっているように見えた。 清逸は手のあたたまる間、それを熟視して、また原稿紙に向った。清逸は白石は徳川時代における傑出《けっしゅつ》した....
義血侠血」より 著者:泉鏡花
活溌《かっぱつ》の気を含めり。陋《いや》しげに日に※《くろ》みたる面《おもて》も熟視《よくみ》れば、清※明眉《せいろめいび》、相貌《そうぼう》秀《ひい》でて尋常....
本州横断 癇癪徒歩旅行」より 著者:押川春浪
中央《まんなか》にポタリと落ちた冷たいものがある。 「オヤ、雨が漏ったのか」と、熟視すると、雨ではない。豆粒程の大《おおき》さの生々しい血汐《ちしお》である。 ....
大島が出来る話」より 著者:菊池寛
棚の前に足を止めて、其処《そこ》に飾られてある、縞柄《しまがら》のよい大島絣を、熟視して居る自分の姿に気が附いて、思わず苦笑する事も屡々《しばしば》あった。 ....
奈々子」より 著者:伊藤左千夫
少ないのである。姉たちがすわるにせまいといえば、身を片寄せてゆずる、彼の母は彼を熟視して、奈々ちゃんは顔《つら》構えからしっかりしていますねいという。 末子で....
河童小僧」より 著者:岡本綺堂
自分より二三間先に小さな人が歩いて行く。で、自分は足早に追付いて、提灯をかざして熟視ると、年のころは十三四の小僧が、この大雨に傘も持たず下駄も穿かず、直湿れに湿....
仇討姉妹笠」より 著者:国枝史郎
そういう中庭の風景を、脇息に倚って眺めていた田安中納言はその紙片を、無言で取上げ熟視された。 一杯に数字が書いてあった。 「これは何だ?」と、中納言家は訊かれ....
妖怪学」より 著者:井上円了
るときにたやすく見るべし。また白昼、障子の骨もしくは行灯、ランプ、燭台等の内外を熟視するときは、細かなる塵毛の群がり立つを見る。その形、毛ようの繊維の立つがごと....
妖怪談」より 著者:井上円了
テーブルに軽く手を触るるのである。このときに、執術者は常に被術者の顔面と文字とを熟視し、かつ、手の感覚に注意するのであります。かかる間に、対者の心中を判断するも....
迷信解」より 著者:井上円了
かりけるが、縁の端にだれとも知らず、白き物を着けたる人立ちいたり。この僧怪しみて熟視すれば、白装束の怪物少しく動きて歩み行くように見えしかば、これ幽霊に相違なし....
飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
て、不思議だと思いながら、抜足をして窃と尾けて行くと、不意に赤児の泣声が聞えた。熟視ると、其奴が赤児を抱えていたのだ。」 市郎は息を詰めて聴いていた。 「そこ....
芸術は革命的精神に醗酵す」より 著者:小川未明
す。 私達は、黒人に対する米人の態度を見、また印度の殖民地に於ける英人の政策を熟視して、彼等が真に人類を愛する信念の何れ程迄に真実であるかを疑わなければならな....
むかでの跫音」より 著者:大倉燁子
から、免れられるよう、救って頂きたいと思って、参上いたしました』 そういう彼を熟視するとその顔にはまるで生気というものがなく、瞼の肉も落ち、小鼻から目尻へかけ....