»
熬
「熬〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
熬の前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「虞美人草」より 著者:夏目漱石
してしまった。 塗り立てて瓢箪形《ひょうたんなり》の池浅く、焙烙《ほうろく》に
熬《い》る玉子の黄味に、朝夕を楽しく暮す金魚の世は、尾を振り立てて藻《も》に潜《....
「門」より 著者:夏目漱石
耳まで赤くした。 そのほかに迎年《げいねん》の支度としては、小殿原《ごまめ》を
熬《い》って、煮染《にしめ》を重詰にするくらいなものであった。大晦日《おおみそか....
「思い出す事など」より 著者:夏目漱石
そのつど人に知れないように、そっと含嗽の水を幾分かずつ胃の中に飲み下して、やっと
熬《い》りつくような渇《かわき》を紛《まぎ》らしていた。 昔の計《はかりごと》....
「黒髪」より 著者:近松秋江
その男の傍に女が来て坐っているところを遠見に見たことがあった。その時さながら身を
熬るような悩ましさを覚えたことがあった。それを思うても、何が苦しいといって恋の苦....
「足迹」より 著者:徳田秋声
た想い出したように銚子をいいつけいいつけしたが、お庄が傍ではらはらするほど、気が
熬れて話がこじくれて来た。 「僕はここの家の人に紹介してもらおう、そしてお庄ちゃ....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
天下を一もぎにしかねまじい南竜公紀州頼宣が虫を抑えて居た処、此国には昔から一種|
熬々した不穏の気が漂うて居る。明治になっても、陸奥宗光を出し、大逆事件にも此処か....
「谷より峰へ峰より谷へ」より 著者:小島烏水
農家によくある、平ったい屋根と、白い壁が、青々とした杜の中へ吸い込まれもせずに、
熬りつくような日の下で、かっきりと浮き上って見える、埃の路は、ぼくぼくして、見る....
「十二支考」より 著者:南方熊楠
質帝隷居士、百味の食を作り、清僧を請じ、余り物もてこの六比丘を請ぜしに、油と塩で
熬《に》た魚をくれぬが不足だ。それをくれたら施主が好《よ》き名誉を得ると言うた。....
「富岡先生」より 著者:国木田独歩
として富岡氏が希望し承認し或は飛びつきたい程に望んでいることでも、あの執拗れた焦
熬している富岡先生の御機嫌に少しでも触ろうものなら直ぐ一撃のもとに破壊されて了う....
「探偵夜話」より 著者:岡本綺堂
でしたが、途中から陰った空はすっかり剥げてしまって、汽車みちの両側では油蝉の声が
熬り付くようにきこえました。強い日光は鎧戸の外まで容赦なく迫って来て、約五時間の....
「小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
家であるのか。小坂部にはなんにも想像が付かなかった。からだはいよいよ熱って来て、
熬つくように喉が渇くので、かれはよろめく足を踏みしめながら、ふたたび水甕のそばへ....
「熊手と提灯」より 著者:正岡子規
ではあるが、上さんの方がかえって愛嬌《あいきょう》が少いので、上さんはいつも豆の
熬《い》り役で、亭主の方が紙袋に盛り役を勤めて居る。もっともこの亭主は上さんより....
「三稜鏡」より 著者:佐左木俊郎
間もなく、何処か田舎の方へ、保養に出掛けて行ったのであった。 梅雨があがると、
熬りつけるような暑い日が幾日となく続いて、再び又暗鬱な雨がじめじめと降り続いた。....