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片破
「片破〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
片破の前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
牧野も可哀そうな男さ。※蓮《けいれん》を妾《めかけ》にしたと云っても、帝国軍人の
片破《かたわ》れたるものが、戦争後すぐに敵国人を内地へつれこもうと云うんだから、....
「死者の書」より 著者:折口信夫
あとは曠野。それに――本村を遠く離れた、時はずれの、人|棲まぬ田居ばかりである。
片破れ月が、上って来た。其が却て、あるいている道の辺の凄さを照し出した。其でも、....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
も駅路の夜明けを偲ばせた、暁かけて禅頂する人達の振鈴の響であろう。眼を開けると、
片破月に照らされた天幕の布が夜露を浴びて、しっとりと重く垂れている。湯川の谷では....
「アーニイ・パイルの前に立ちて」より 著者:小林一三
地の境内に立って、日比谷公園から宮城方面の暮れゆく夏の夜の黒い樹木の上には、折柄
片破れ月が澄みきった星空に光っている。右隣にそびゆる第一生命の白亜館が、浮き城の....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
葉一つがさとも云わぬ。霜を含んだ夜気は池の水の様に凝って、上半部を蝕い欠いた様な
片破れ月が、裸になった雑木の梢に蒼白く光って居る。
立とまっては耳を傾け、答な....
「小説 不如帰 」より 著者:徳冨蘆花
び 「早く帰ってちょうだいな」 という声のあとを慕うてむせび来るのみ。顧みれば
片破月の影冷ややかに松にかかれり。 「お帰り」の前触れ勇ましく、先刻玄関先に二|....
「薤露行」より 著者:夏目漱石
と落ちる。途端に裸ながらの手燭《てしょく》は、風に打たれて颯《さ》と消えた。外は
片破月《かたわれづき》の空に更《ふ》けたり。 右手《めて》に捧《ささ》ぐる袖の....
「趣味の遺伝」より 著者:夏目漱石
らん限りの髯《ひげ》を生《は》やして、出来るだけ色を黒くしている。これらも戦争の
片破《かたわ》れである。大和魂《やまとだましい》を鋳《い》固《かた》めた製作品で....
「坊っちゃん」より 著者:夏目漱石
ちを付けると同じ事になる。返さないのは清を踏《ふ》みつけるのじゃない、清をおれの
片破《かたわ》れと思うからだ。清と山嵐とはもとより比べ物にならないが、たとい氷水....
「十二支考」より 著者:南方熊楠
うて取り寄せ開くと中に金の餅一つあり厚さ二寸ばかり、それを取り出して中より破って
片破《かたわ》れを箱に入れ今一つの
片破れを男に与えて、これを一度に仕《つか》わず....
「日記」より 著者:宮本百合子
が可恐くなり、今に見て居れ、と云う声が天から来るように感じる。 そんな日本人の
片破《かたわ》れに生れたかと思うと情けない。どうぞそんな根性だけは自分の裡にない....
「街」より 著者:宮本百合子
言《ひとりごと》に、この夜中で応えるのは、死んだ嫁が清元のさらいで貰った引き幕の
片破《かたわ》ればかりだ。 「全くやんなっちゃう」 今日風呂へ行くと、八百友の....