物の哀れ[語句情報] »
物の哀れ
「物の哀れ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
物の哀れの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「鳥辺山心中」より 著者:岡本綺堂
くようにも思われた。 その沈んだ愁《うれ》い顔を見るにつけて、半九郎もいよいよ
物の哀れを誘い出された。彼はある夜しみじみとお染に話した。 「将軍家が江戸表へ御....
「柿の種」より 著者:寺田寅彦
えって王宮のゴブランにまさる。 枯れ芝の中に花さく蕗の薹を見いでて、何となしに
物の哀れを感じ侍る。 自動車のほこり浴びても蕗の薹(昭和三年四月、渋柿) ....
「俳諧の本質的概論」より 著者:寺田寅彦
ことでなく仏教の寂滅でもない。しおりとは悲しいことや弱々しいことでは決してない。
物の哀れというのも安直な感傷や宋襄の仁を意味するものでは決してない。これらはそう....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
人という気分にひたってみると、なんだか知らないが、犇々《ひしひし》として悠久なる
物の哀れというようなものが身にせまってくるのを覚えて、泣きたくなりました。 こ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
靄《もや》を赤く焼いている。お松はあの中で何を思っているだろうと、七兵衛もそぞろ
物の哀れを感ずるのであります。 七兵衛は、いま壬生の南部屋敷から程遠からぬとこ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
、なんだか、こう聞いているうちに、遠いところへ持って行かれるような気分で、人生の
物の哀れとか、悲壮な超人の心の痛みとかいうものに誘われて、縹渺《ひょうびょう》と....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
う語り出でたのが、幾分か今までの凄味を消して、なんとなく艶《つや》っぽいような、
物の哀れを添えることになりました。 「へえ、お前さんも、その心中者を実見したんだ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
いものの映ることを止めることができません。 威厳の人としてのこの主人に、お松は
物の哀れをはじめて見出しました。それは甲州以来の昔の思い出が、今までは人の身の上....
「源氏物語」より 著者:紫式部
は来ない。それが気になって頭中将は、いやな態度だ、あんな家に住んでいるような人は
物の哀れに感じやすくなっていねばならないはずだ、自然の木や草や空のながめにも心と....
「山の手の子」より 著者:水上滝太郎
行衛《ゆくえ》を見守った遣瀬《やるせ》ない心持が、水のように湧《わ》き出して私は
物の哀れを知り初めるという少年のころに手飼いの金糸雀《かなりや》の籠《かご》の戸....
「裏切り」より 著者:坂口安吾
下座してまでの懇願哀訴でした。それは多彩でもあれば執念深くもあり、またどことなく
物の哀れもあるようなチャルメラ的なものであったのですが、当人の身にしてみればダテ....
「妾の半生涯」より 著者:福田英子
なし。さるからに、母上は妾の将来を気遣う余り、時々「恋せずば人の心はなからまし、
物の哀れはこれよりぞ知る」という古歌を読み聞かせては、妾の所為《しょい》を誡《い....
「江戸芸術論」より 著者:永井荷風
の裾の絹摺《きぬず》れする響《ひびき》等によりて、時に触れ物に応じて唯何がなしに
物の哀れを覚えしむる単調なるメロデーに過ぎず。浮世絵はその描ける美女の姿態とその....
「野草雑記・野鳥雑記」より 著者:柳田国男
の幻しで感動したことが、強く残っていなければ神の像は描かれぬ如く、かつてある日の
物の哀れというものが、自然に我手を役してその面影を再現させようとしたのが、言わば....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
心は安く、気はかろし、 揺れ揺れ、帆綱よ、空高く…… 私の今度の航海は必ずしも
物の哀れの歌枕でも世の寂栞を追い求むる風狂子のそれでもなかった。ただ未だ見ぬ北方....