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物哀れ
「物哀れ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
物哀れの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「思い出の記」より 著者:小泉節子
ですから、松虫が夕方近く切れ切れに、少し声を枯らして鳴いていますのが、いつになく
物哀れに感じさせました。私は『あの音を何と聞きますか』と、ヘルンに尋ねますと『あ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
右や左のお旦那様」 また一人、菰《こも》をかぶって橋の欄干《らんかん》の下から
物哀れな声を出しました。兵馬も駕籠舁《かごかき》もそんな者にはいよいよ取合わない....
「郷愁」より 著者:佐左木俊郎
を、憂鬱に、感傷的にしてしまうばかりであった。併し私は、馬鹿馬鹿しいほど淋しく、
物哀れな気分になりながらも、こうして八百屋の店や果物屋の店頭を覗いて歩くのが好き....
「写生紀行」より 著者:寺田寅彦
った。名前だけで想像していたこの渡し場は武蔵野の尾花の末を流れる川の岸のさびしい
物哀れな小駅であったが、来て見るとまず大きな料理屋兼旅館が並んでいる間にペンキ塗....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
―父親も一人」 と言って俯向《うつむ》いた竜之助の姿を、お豊はなんともいえぬほど
物哀れに感じたのであります。さてはこの人も自分と同じく、つれなき世上の波に揉《も....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
戸桁に取付いたのを※ぎ取られると、今は頼みの綱の井戸縄に、しっかりと抱きついて、
物哀れな悲鳴を揚げているのであります。死を怖るることかくの如く、生に愛着すること....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
に、さながら屠所《としょ》の歩みのような小坊主の気色《けしき》を見ると、いかにも
物哀れで、群集の熱狂がこれから何をやり出すのだか、心配に堪えられないことどもです....
「ドナウ源流行」より 著者:斎藤茂吉
この画家は豊麗な、可憐な女を画いた。そうすれば、これで本望なので、そういう覚悟に
物哀れなところもあり、倨傲なところもあったのではあるまいか。そんな気がして幾つか....
「江戸芸術論」より 著者:永井荷風
だ》ちて柔かき提灯《ちょうちん》の光に春の夜道を歩み行くが如き、安永天明における
物哀れにまで優しき風情は嘉永《かえい》文久《ぶんきゅう》における江戸の女には既に....
「妾宅」より 著者:永井荷風
り》に七輪《しちりん》の下をば渋団扇《しぶうちわ》であおいでいる。 七 何たる
物哀れな美しい姿であろう。夕化粧の襟足|際立《きわだ》つ手拭の冠《かぶ》り方、襟....
「伝通院」より 著者:永井荷風
にも、何《なに》とはなく、いわば興亡常なき支那の歴代史を通読した時のような淋しく
物哀れに夢見る如き心持を覚えるのであった。殊に自分が呱々《ここ》の声を上げた旧宅....
「日和下駄」より 著者:永井荷風
いうばかりではない。理窟にも議論にもならぬ馬鹿馬鹿しい処に、よく考えて見ると一種
物哀れなような妙な心持のする処があるからである。 第三 樹 目に青葉|山《や....
「すみだ川」より 著者:永井荷風
く。何処《どこ》か近くの家で百万遍《ひゃくまんべん》の念仏を称え始める声が、ふと
物哀れに耳についた。蘿月は唯《たっ》た一人で所在《しょざい》がない。退屈でもある....
「春雪の出羽路の三日」より 著者:喜田貞吉
新墓が二基、雪を掘り上げた擂鉢の底のような所に、淋しく設けられているのはいっそう
物哀れだ。雪国では葬式も容易でない。 新庄以北、釜淵・及位あたり、山手にかかっ....
「黒猫十三」より 著者:大倉燁子
辰馬久は目隠しをされ、猿轡をはめられ、両手を縛られていた。シークな彼が、この時位
物哀れに見えたことはなかった。 辰馬は宮岡警部と、ピストルを手に持った十三との....