物寂しい[語句情報] » 物寂しい

「物寂しい〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

物寂しいの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
から小伝馬町への俗に目なし小路と称した、一丁目も二丁目もない小屋敷つづきの、やや物寂しい一廓へさしかかったのが丁度五ツ頃―― と――はしなくもその四ツ辻を向う....
深夜の市長」より 著者:海野十三
椀の温い飲物もほしかった。どこかに蕎麦やでも起きていないかしら。 この辺一帯は物寂しい工業地帯だった。あたりには鉄が錆びたような酸っぱい空気が澱んでいた。そし....
神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
パチパチパチパチパチパチと、岩燕が群をなして颯と頭上を翔け過ぎた。それさえ所がら物寂しい。 また陶器師は眼を閉じた。じっと思案に更けっている。 庄三郎はその....
春昼」より 著者:泉鏡花
かよわい人を冥土へ引立てて行くようで、思いなしか、引挟まれた御新姐は、何んとなく物寂しい、快からぬ、滅入った容子に見えて、ものあわれに、命がけにでも其奴らの中か....
歌行灯」より 著者:泉鏡花
酌もうよ、座頭殿。」と差俯いて独言した。……が博多節の文句か、知らず、陰々として物寂しい、表の障子も裏透くばかり、霜の月の影冴えて、辻に、町に、按摩の笛、そのあ....
菎蒻本」より 著者:泉鏡花
た参詣人が、びしょびしょと賽銭箱の前へ立った時は、ばたり、ばたりと、団扇にしては物寂しい、大な蛾の音を立てて、沖の暗夜の不知火が、ひらひらと縦に燃える残んの灯を....
沼夫人」より 著者:泉鏡花
名に聞ゆる威厳をこそ備えたれ。何となく涸れて荒びて、主やあらん、その、主の留守の物寂しい。 濃い緑の雑樹の中へも、枝なりにひらひらと日の光が折込んで、縁を浅黄....
星女郎」より 著者:泉鏡花
、どこか、あからさまに里が浅くなって、われ一人、草ばかり茂った上に、影の濃いのも物寂しい。 それに、藁屋や垣根の多くが取払われたせいか、峠の裾が、ずらりと引い....
日置流系図」より 著者:国枝史郎
間も夜は更けて行った。と鳴り出した鐘の音。回向院で撞く鐘でもあろうか。陰々として物寂しい。 とたんに「ヒェーッ」と帛を裂くような凄じい掛け声が掛かったかと思う....
生死卍巴」より 著者:国枝史郎
った。 風の音がサラサラと草を渡り、日がまじまじと照っていて、四辺はひっそりと物寂しい。 と、高い笑い声がした。 老樵夫が上げた笑い声であった。 「ああい....
天草四郎の妖術」より 著者:国枝史郎
だ其折柄、窓を通して射し込んで来たのは落ち行く太陽の余光でした。 その華かにも物寂しい焔のような夕陽を浴びて四郎は静かに寝ていましたが、 「われ渇く」と呟きま....
前記天満焼」より 著者:国枝史郎
間遠ではあるけれど、五月幟がハタハタと、風に靡く音がした。 深夜だけにかえって物寂しい。 「そうだ今夜は宵節句だった」 これは声に出して云ったのである。 ....
名人地獄」より 著者:国枝史郎
の九十九里ヶ浜で、おりから秋の日暮れ時、天末を染めた夕筒が、浪|平かな海に映り、物寂しい景色であったが、一隻の帆船が銚子港へ向かって、駸々として駛っていた。 ....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
が暮れる。 * とうとう日が暮れてしまった。 いかにも何かしら物寂しい風と煙である。色と響である。光のない上の世界と下の世界、その間を私たちの....
黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
、裂けた雪の繃帯から生々しい岩骨を曝露して、目が眩むようだ、何処かで郭公が頻りに物寂しい声を繰り返して鳴いている。 目指す赤谷山に続く山稜は、此の窪地の西のは....