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物悲しい
「物悲しい〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
物悲しいの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「将軍」より 著者:芥川竜之介
ん》の火《か》っ気《き》が、快《こころよ》い温《あたたか》みを漂わせていた。が、
物悲しい戦争の空気は、敷瓦《しきがわら》に触れる拍車の音にも、卓《たく》の上に脱....
「箕輪心中」より 著者:岡本綺堂
ている。 たなばた祭りの笹の葉をそよそよと吹きわたる夕暮れの風の色から、廓にも
物悲しい秋のすがたが白じろと見えて、十日の四万六千日《しまんろくせんにち》に浅草....
「世相」より 著者:織田作之助
尾久町の待合「まさき」で殺して逃亡し、品川の旅館で逮捕されるまでの陳述は、まるで
物悲しい流転の絵巻であった。もののあわれの文学であった。石田と二人で情痴の限りを....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
。船べりからは百足虫のように艪の足を出し、艫からは鯨のように舵の尾を出して、あの
物悲しい北国特有な漁夫のかけ声に励まされながら、まっ暗に襲いかかる波のしぶきをし....
「転機」より 著者:伊藤野枝
た。けれど、その沈静は、私の望むような、批判的な考えの方には導かないで、何となく
物悲しい寂しさをもって、絶望的なその村民達の惨めな生活を想像させるのであった。私....
「灰色の記憶」より 著者:久坂葉子
たら、お母様、唯今かえりました、と云うのです」 先生がそう云った時、私は大へん
物悲しい表情をして、 「ママはおうちに居ないの」 と訴えたことがあった。しかし....
「小春」より 著者:国木田独歩
て窓から射しこむと机の上に長い影を曳いて、それをぼんやり見ていると何だか哀れぽい
物悲しい心持ちがして来ましたが、ふと画の事を考えて、そうだ今だとすぐ画板を引っ掛....
「名人地獄」より 著者:国枝史郎
寸先も見えなくなった。轟々という凄じい音は、巻立ち狂う波の音で、キキー、キキーと
物悲しい、咽ぶような物の音は、船の軋む音であった。空を仰げば黒雲湧き立ち、電光さ....
「女侠伝」より 著者:岡本綺堂
がここに立寄ったのは、秋もようやく老いんとする頃で、梧桐はもちろん、槐にも柳にも
物悲しい揺落の影を宿していた。 わたし達も好きで雨の日を択んだわけではなかった....
「番町皿屋敷」より 著者:岡本綺堂
うのはこれであろう。今のお菊には取分けて、琴の主の身の上が痛々しく思われた。その
物悲しい琴唄は弾く人のあわれを歌い、あわせて聴く人の哀れを知らせるのではないかと....
「久野女史をいたむ」より 著者:兼常清佐
。そして私がベルリンを去るまで半年余りの間幾度か女史に会った。すべて昔の思い出は
物悲しい、特にこの不幸な楽人の思い出は誠に私の心を痛ましめる。 よほどの語学の....
「ニッポン音楽」より 著者:兼常清佐
君がもし海岸の或る村に行くならば、そこに『七人様の唄』や『泣き節』などいうような
物悲しい唄がある事を知るでしょう。それは唄う人も少いし、今その唄う人が死ねば私共....
「青春の息の痕」より 著者:倉田百三
つくことができました。なにとぞ私らの怠慢を許して下さいまし。 病院を出る時には
物悲しい思いをいたしました。癒らないで出るかなしさを人々に慰められるのがいっそう....
「春になる前夜」より 著者:小川未明
ちの死骸は、飢えたおおかみやくまに食べられたか、見つかりませんでした。ただ、この
物悲しい音色は、風に送られて、その後、幾夜も、この広野の空を漂っていたのです。....
「ペスをさがしに」より 著者:小川未明
てしまったよ。」 政ちゃんは、寒い、木枯らしの吹きそうな、晩方の、なんとなく、
物悲しい、西空の、夕焼けの色を、目に描いたのです。 「どっちから、ペスが、歩いて....