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物憂い
「物憂い〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
物憂いの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「小さき者へ」より 著者:有島武郎
。そんな事を書けば限りがない。ともかく私たちは幸《さいわい》に怪我もなく、二日の
物憂い旅の後に晩秋の東京に着いた。
今までいた処とちがって、東京には沢山の親類....
「冬の日」より 著者:梶井基次郎
グラスが鳴り、流眄《ながしめ》が光り、笑顔が湧き立っているレストランの天井には、
物憂い冬の蠅《はえ》が幾匹も舞っていた。所在なくそんなものまで見ているのだった。....
「白妖」より 著者:大阪圭吉
もとろとろとまどろみ続ける。背鏡で時どきそれを盗み見ながら、ロシア帽子の運転手は
物憂い調子でハンドルを切る。 この道はこのままぐんぐん登りつめて、やがて十国峠....
「神秘昆虫館」より 著者:国枝史郎
どうも俺はこの頃になって、少し性質が変わったようだ。桔梗様に失恋したからだろう」
物憂い初夏の日が続こうとした。 しかしとうとうある夜のこと、またも小一郎は敵に....
「小公女」より 著者:菊池寛
寝床。階下の部屋には置けないほど使いふるした椅子、テエブル。明りとりの天窓には、
物憂い灰色の空がのぞいているばかりです。その下に、こわれた紅い足台があるのを見つ....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
から描き出すことは、なかなかむずかしいことであったろう。睫毛の垂れた不活発そうな
物憂い眼と、そうして思案にも心配にも容易に動かされないような、広い平らな顔とは、....
「沙漠の古都」より 著者:国枝史郎
の欧州のどこへ行ったとて、到底聞く事の出来ないような、東洋式のその調和! 単調で
物憂い太鼓の音。人間の霊魂を地の底から引き出して来るような笛の音。聞く人の心をせ....
「青春の息の痕」より 著者:倉田百三
十月二十九日。庄原より) 乱るる心と修道院への憧憬 湿潤な秋の雲のように
物憂い私の心のうちは、近頃ややもすればみだれがちにて、今朝もとうとう雨になった庭....
「エリザベスとエセックス」より 著者:片岡鉄兵
望と死に導いたほどであった。 ふしぎの国――愛らしく、野蛮で、神話的な国土は、
物憂い安逸に、彼を誘った。裸を包むマント。顔面にまで垂れかかる長い髪たば。突撃の....
「港に着いた黒んぼ」より 著者:小川未明
いる船の旗の揺れている、ほばしらの上にも月の光は当たっています。波は、昔からの、
物憂い調子で、浜に寄せては返していました。 姉は、あてもなくそれらの景色をなが....
「小さな赤い花」より 著者:小川未明
ました。そして、そこは、がけの南に面していまして、日がよく当たりましたから、花は
物憂いのどかな日を送ることができましたが、なにしろ、がけの中ほどで、ことにほかに....
「ふるさとの林の歌」より 著者:小川未明
待ったのであります。それは、どんなに待ち遠しいことでありましたでしょう。やがて、
物憂い、暗い冬が、北へ、北へとにげていきました。 春になると、雪がだんだん消え....
「何を作品に求むべきか」より 著者:小川未明
るまい。そして、ブルジョア作家は、なおこれ等の事実から、いかに、人生というものの
物憂いか、また、はかないものであるかを、また人間の醜いものであるかを語ろうと欲す....
「大きなかしの木」より 著者:小川未明
風が吹いて、かしの木に向かって戦いを挑んだからでありました。 ああまた、長い、
物憂い冬の間、この年とった木と、北風と、雪との戦いがはじまるのであります。そして....
「鳩つかひ」より 著者:大倉燁子
頭を繃帯でくるくる巻いた主人が横たわっている、言葉をかけようとしたが舌が重くって
物憂い、体を起しかけたら忽ち眩暈がして前倒そうになった。立松が葡萄酒を飲めと云っ....