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犇と
「犇と〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
犇との前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
を見合せた、トタンに跫音、続いて跫音、夫人は衝と退いて小さな咳。 さそくに後を
犇と閉め、立花は掌に据えて、瞳を寄せると、軽く捻った懐紙、二隅へはたりと解けて、....
「多神教」より 著者:泉鏡花
帯|際をむずと取る。ずるずる黒繻子の解くるを取って棄て、引据え、お沢の両手をもて
犇と蔽う乱れたる胸に、岸破と手を差入る)あれ、あれえ。 神職 (発き出したる形代....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
枕もとを見つめていた。外からは風さえ流れ込んだ気配が見えなかった。お道はわが子を
犇と抱きしめて、枕に顔を押しつけていた。 現在にこの生きた証拠を見せつけられて....
「飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
けた椿の二枝は、二人の手に因て交換されたのである。 重太郎はお葉の枝を我が胸に
犇と押当てた。お葉は重太郎の枝を我が袖に抱いた。重太郎の眼には涙が見えた。お葉も....
「夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
い起して太い息をつく。迢空さんが姫に考えさせた「朝目よし」の深い意義が彼が身にも
犇と伝って来るからである。姫の抱懐する心ばせには縦横に織り込まれる複雑な文彩が動....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
険で近寄れなかった。と突然、火のようなセーニャの泣き声が起った。セーニャは両腕を
犇とその顔にあてた。 ママは何か大声で呼び続けた。たぶん牡牛を家へ連れて帰るよ....
「赤格子九郎右衛門の娘」より 著者:国枝史郎
袖姿、一人の娘が川下から脛もあらわに走って来たが、 「助けて!」と叫ぶ声と一緒に
犇と夜鷹へ抱き付いた。それをその儘しかと抱き、 「見れば可愛らしいお娘御、こんな....
「八ヶ嶽の魔神」より 著者:国枝史郎
と元来た方へ引っ返した。 「ははあ、さては狼藉者だな」 呟いたとたんに若い女は
犇と葉之助へ縋り付いた。衣裳も髪も乱れてはいたが、薄月の光に隙かして見ると、並々....
「春泥」より 著者:久保田万太郎
。――そのかの女の肩をいきなりかれは引きよせた。 「寂しかったろう、おい……?」
犇とばかりかれはかの女を抱きしめた。 あくる朝、起きぬけに……といってももうそ....
「支倉事件」より 著者:甲賀三郎
りしめ、歯をバリ/\と噛んだ。 「あ、あなた」 静子は情なくなって来たので夫に
犇と縋ろうとした。 支倉はそれを振放して怒号し続けた。 「俺は死なゝい。断じて....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
夜明け迄に幾度か眼が覚めた。毛布を被って芋を転がしたように寝ている体と体とが
犇と押し合って、偃松の床からずり落ちそうになる、其度毎にねちごち。よく戯談をいう....
「旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
死体は男女とも実に行儀がよい。しごきで結わえたままの身体を新筵の上に寝かされて、
犇と左右から寄り添いながら、男女共にその顔は、何の苦しみもなく少しのもがいたあと....
「幕末維新懐古談」より 著者:高村光雲
も出来ないのでした。 しかし、私たち親子の一心が通ったものか、とにかく、親子は
犇と抱き合いました。 「もう大丈夫だ。俺が附いている」 こう父が確かりした声で....
「乞食学生」より 著者:太宰治
こそは残れ 我が胸に その実を犇《ひし》と護《まも》らなん その実を
犇と護らなん」(アルト・ハイデルベルヒ) 歌っているのは、私だけであった。調....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
て、この西班牙的な群集・西班牙的な乗物・西班牙的な騒音!――それがどうだ! 今や
犇と町の一方をさして渦まいて往く。闘牛場へ! AH! SI! SI! すぺい....