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甘酸っぱい
「甘酸っぱい〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
甘酸っぱいの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「赤耀館事件の真相」より 著者:海野十三
水を与えました。何もしらぬ夫人は、灼けつくような渇きを医すため、夢中になってその
甘酸っぱい水をゴクリと咽喉にとおしたとき、青酸加里のカプセルは笛吹川の口を離れて....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
の音曲が、美しい西洋音楽と入れかわりかけようとしていた。エルマンを聴いて、今まで
甘酸っぱいような厭味を感じていた提琴の音のよさがわかり、ジムバリスト、ハイフェツ....
「谷より峰へ峰より谷へ」より 著者:小島烏水
は、黄花の石楠花が、ちらほら咲いている、この花の弁で承けた霧の雫を吸ったときは、
甘酸っぱい香気で、胸が透いた。 岩壁は次第に薄い刃となり、擦り切れて、尖ってい....
「椰子蟹」より 著者:宮原晃一郎
うに堅い核《たね》が、柔かな肉の中にあります。それを割ると中からソーダ水のような
甘酸っぱい水と、豚の脂《あぶら》のかたまったようなコプラというものが出て来ます。....
「宇宙戦隊」より 著者:海野十三
。そこで皮をむいた。ぷうんと蜜柑の香りがした。一房ちぎって口の中へほうりこんだ。
甘酸っぱい汁――たしかに地上でおなじみの蜜柑にちがいなかった。しかもこの味は四国....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
う、胡麻の蠅にしてやられ、乞食から、食い逃げ、借倒しまで功が積んだな、と神尾が、
甘酸っぱい面《かお》をして読み進みました。 五十七 しかし、....
「酒ぎらい」より 著者:太宰治
ある。台所の隅に、その一升瓶があるばっかりに、この狭い家全体が、どろりと濁って、
甘酸っぱい、へんな匂いさえ感じられ、なんだか、うしろ暗い思いなのである。家の西北....
「葉桜と魔笛」より 著者:太宰治
なおのこと妹が可哀そうで、いろいろ奇怪な空想も浮んで、私自身、胸がうずくような、
甘酸っぱい、それは、いやな切ない思いで、あのような苦しみは、年ごろの女のひとでな....
「幻の彼方」より 著者:豊島与志雄
塗って、大きな束髪に結っていた。若々しさのうちに何処か緊りのない爛熟した肉付で、
甘酸っぱい匂い――匂いとも云えないほどの風味が、その全身に漂っていた。凡ての点で....
「林檎」より 著者:豊島与志雄
ですか。」 彼はしまりのない薄い唇をなお弛めて、一人でにやにや笑い初めた。 「
甘酸っぱいような妙な匂ですよ。牛乳の腐りかけたのがありますね、あんな風な匂です。....
「人間繁栄」より 著者:豊島与志雄
た濡んだ眼付で、彼の肩にしがみついていた。張りきったくりくりした肉付が、何となく
甘酸っぱい肌の匂いと共に、彼の胸の中に泌み通ってきた。薄すらとかすんだ生温い朝日....
「次郎物語」より 著者:下村湖人
っ。」 運平老はもう一度大きく笑った。 俊亮も微笑した。しかし彼は、鼻の奥に
甘酸っぱいものを感じて、眼を伏せたままだった。 運平老は、それから、襖の向こう....
「米」より 著者:犬田卯
た、生漬の梅だの、腐れかけた李だのを、うんとこ食べていた」と白髪の村医は笑った。
甘酸っぱいような水薬をつくって、その飲み方や、病児の扱い方などを細々と説明して、....
「小説 円朝」より 著者:正岡容
うところだった。 「す、すみません」 ピョコピョコお辞儀をして辺りを見廻すと、
甘酸っぱいようなものの立ちこめている晩春の暮れ方。飛び交う蝙蝠《こうもり》の翼を....
「宝永噴火」より 著者:岡本かの子
は直ぐに取戻されては来ない。錐を引いたと同時に去って行く痛みの尾のいおうようない
甘酸っぱいひりひりした感覚の中に、うっかり閃いて来る心象は橘屋の娘のことでなけれ....