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病犬
「病犬〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
病犬の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「懶惰の歌留多」より 著者:太宰治
いて、うっそりしている。怠けものは、陸の動物にたとえれば、まず、歳《とし》とった
病犬であろう。なりもふりもかまわず、四足をなげ出し、うす赤い腹をひくひく動かしな....
「古典風」より 著者:太宰治
も、許すことなく苛酷の刑罰を課した。陰鬱の冷括《れいとう》、吠えずして噛む一匹の
病犬に化していた。一夜、三人の兵卒は、アグリパイナの枕頭にひっそり立った。一人は....
「船医の立場」より 著者:菊池寛
えた。 が、そうした風光のうちを、熱海から伊東へ辿る二人の若い武士は、二人とも
病犬か何かのように険しい、憔悴《しょうすい》した顔をしていた。 二人は、頭を大....
「忠直卿行状記」より 著者:菊池寛
かった晴れがましい微笑が、頬の辺に漂うた。 しばらくすると、忠直卿の目の前に、
病犬のように呆《ほう》けた与四郎の姿が現れた。数日来の心労に疲れたと見え、色が蒼....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
しいほどに取りのぼせていた。ここでうっかり嗾《けしか》けるようなことを云ったら、
病犬《やまいぬ》のような彼女は誰に啖《くら》い付こうも知れなかった。半七は逆らわ....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
二 「あの鶏はどうしたのでしょうね」と、庄太は云い出した。「犬にゃあ
病犬というものがあるが、鶏にゃあ珍らしい」 半七はやはり無言で考えていると、女....
「深夜の市長」より 著者:海野十三
かと思うと、胸を押えて地面に俯臥した。そしてヒイヒイと咽喉を鳴らしながら、まるで
病犬のように黄色い胃液を吐いてまわるのだった。 「まあ面白い。ホラ絹ちゃん、チュ....
「霜凍る宵」より 著者:近松秋江
母親は、さすがに手出しはし得なかったが、今にも打ちかかって来そうな気勢で、まるで
病犬が吠えつくような状態で、すこし離れたところから、がみがみいっている。 「あん....
「フランダースの犬」より 著者:菊池寛
るのでした。それから何週間もの間、パトラッシュは、力もなく、役にもたたず、全くの
病犬で、死にはすまいかと、案じられるようでした。しかしその間、犬は決して、荒くど....
「やどなし犬」より 著者:鈴木三重吉
その肉のきれのかどを、小さく食い切って、ぺちゃぺちゃと食べて見せました。それでも
病犬は、じっとしたまま動きません。こちらの犬は、しかたなしに、こんどは肉のきれを....
「現代忍術伝」より 著者:坂口安吾
フヤラと力がこもらない。彼は立とうとして、両手をつき、気があせって、ハッ、ハッと
病犬のように舌をたらして息をついた。 彼は本当に神様にすがりたかったのである。....
「番町皿屋敷」より 著者:岡本綺堂
が、この時に双方の間につかつかと出て来た。 「仔細もなしに咬み付くような、そんな
病犬は江戸にゃあいねえや」と、彼は侍を尻目にかけていった。「白柄組とか名をつけて....
「安吾の新日本地理」より 著者:坂口安吾
よりも毛並のわるい時期ではあったが、そして私の見た名犬には下痢をして食のすすまぬ
病犬などもいたのだけれども、私らが西洋犬を飼う時の通常の心づかいに比べて、秋田犬....
「地上」より 著者:島田清次郎
鹿! 大盗人! うう、今に見ろ! 今に見ろ!」 必死の唸きが春の夜を月に吠える
病犬の叫びのようにいつまでも吠えてやまなかった。灰小屋の中で灰に塗れて「焼け焦げ....
「贋物」より 著者:葛西善蔵
最も恐れている冬が来ると、しばしばこの亡霊に襲われたと言うのだ。彼は家を追われた
病犬のように惨めに生きていたというのだ。そして下宿へも帰れずに公園の中をうろつい....